試練の結末
あっさりと負けを認めたナギサ・クジョウは「負けではありませんが、試練はクリアしたので、この【在】の印は差し上げます」と言って、彼女は【在】と書かれたリンゴを取り出す。
あからさまに、納得が出来ない。そう思っていると、ナギサは負けを認めた理由について、説明し始めていた。
どう言う事なのかの説明については、ナギサが言うには。
「――――――――……そもそも私がこの試練で見極めて欲しいと言われましたのは、姫さんの決意に関しましてです。断じて、勝敗には関係ありません。
本来であれば私の策によりますと、ナナミで時間を止めている間に私がセメントで覆って動きを止める算段でしたが、少し狂いましたね。まぁ、姫さんの気持ちを引き出すのが目的だったし、大丈夫ですね」
あの戦いでナギサが見たかったのは、姫の決意らしい。
「……と言うか、どうしてかと言いますと、姫さんは【在】の印を持つと、そのままなし崩し的に【前】の印を手に入れます」
「その辺はお分かりでしょう?」と、ナギサが言う。
「その辺りは、聞いています」
と、僕はそう答える。
確か、ナギサが渡してくれたこの【在】の印を姫が持つ事が、【前】の文字を持つ条件だと言う。
「……あれを使えば、姫はとてつもない強さを持つ事になるでしょう。けれども、強い力には危険が付き物。【前】とは己の血、団三郎狸と玉藻前の血を受け入れないといけない」
「それと相対するために、姫の気持ちを確かめた、と?」
「……まぁ、今回の試練はそれが目的なのだろう、ね」
と言うか、姫の気持ちを確かめるのに、そんな対決で気持ちを見なくても良いんじゃないだろうか? もう少し、他に試練を考えて欲しい物である。
「……私はこれで失礼します。後はお任せしますね。
あぁ、それと大丈夫ですから」
ナギサはそう言って、一瞬のうちで消えてしまった。その際に、一瞬またしても視界が揺らいだ気がしたので、恐らくはまたしても使ったのだろう。あの、時を操作する能力と言う物を。
(これで勝利が条件だったら、敗けてたな……)
「ともかく、お疲れ、姫」
「うん!」
今回の試練について、僕はほとんど役に立たなかった。
この試練はほとんど、姫の気持ちを見る物だった。姫がどう動くか、それが試練の本質だったと言える。あの状況で立ち向かった姫に、僕は敬意を送りたい。
そしてまだセメントで手足を動けない状態にしている仲間の元へ、僕達は戻った。
そう、仲間の元へ向かったはず……だった。
「……私達も理解不能」
「え、えっとどうなっているんでしょうね」
3人が倒れたはずのスミガタケの森。そこには自らを発火させる事によって手と足を自由にした月裏さんと、その月裏さんによって動ける状態になったユリー。
そして、もう1人。
捕まっていたはずの、紅葉の姿はどこにも無かった。
【朝比奈揺 Lv.32 種族;人間 職業;神殺しの二剣流 HP;700/790 MP;570/630 加護;ルルリエルの加護
姫 Lv.30 種族;獣人(狸族と狐族のハーフ) 職業;禁呪術師 HP;540/590 MP;800/880
ユリエル・アトラシ Lv.30 種族;人間 職業;二刀流 HP;540/590 MP;340/340
月裏 Lv.26 種族;変化の不死鳥 職業;拳士 Hp;310/340 MP;780/810】