リッチ、紅葉の憂鬱
―――――――リッチ、紅葉が魔法使いとして大成したのは死んでからであった。生前の頃、シデス・ノロイと言う名前であった彼女は、魔法を使う為に様々な魔法の研究を行っていた。魔力の少なかった彼女は沢山の魔法を使う事は出来なかったが、それでもそれなりの魔法使いとして世界を楽しんでいた。
そしてある時、死んだ紅葉は魔法使いのゾンビ、リッチへとなり、そして大成した。リッチとなった彼女は魔力が上がり、さらに様々な魔法が使えるようになっていた。
魔法には4つの属性があり、火、水、雷、土の四属性があるが、生前は雷しか使えなかった自分がその4つ全ての属性を使えるようになっていたのは驚いていた。さらに魔力が上がったため、初級、中級、上級の全てのクラスの魔法が使えるようになっていた。魔物として暮らしながら、魔法の上達に勤めていた彼女。
それは彼女の倒される少し前まで魔法の研究は続いていた。
彼女は満足だった。他にもいくつか使いたかった魔法はあったが、それでも魔法使いとして沢山の魔法を使えた事は満足であった。消滅する事に何の疑問も持たなかった彼女だったが、彼女は消える事なく、ある場所に転移された。
――――――――――――その場所こそ、何人も居る神の1人、飼育の神、豆羽ミラキジェスの使い魔飼育園だった。
赤い髪を腰より長く伸ばしまくった、エメラルド色の女らしい女性的な顔。頭の上には王冠のようなアクセサリー、少し白めの灰色の制服と赤いネクタイ。赤いスカートをはいた、モデル並みのボディ。姫様と言う言葉が似合う女性、それが豆羽ミラキジェスであった。
「動物園は英語でZoo! 私が飼育の神、豆羽ミラキジェスその人である。君達には異世界転生者と一緒に戦うための訓練を受けて貰おう。訓練と言っても、転生者に気に入ってもらうための訓練、所謂使い魔としての訓練だよ」
そう言って、彼女は使い魔の訓練をやってくれた。けれどもそんな使い魔の訓練に反発する人が何匹か居ました。白面九尾さんや、黒龍さん、ダークエルフさん達はその最たる例でいつも、3匹で楽しそうに好き勝手に振る回っていた。私は特に反対する理由がなくて、豆羽ミラキジェスさんの飼育と言う名の教育を受けていた。
その教育は面白くて、楽しくて、だからこそ私は教育を素直に受けていた。それが他の者達からしたら、かなり優等生に思えたらしくて私はいつの間にか、優等生組になっていました。
ある時、1人の男性がやって来た。いや、ここだから神様の1人なのでしょう。 闇夜に溶け込むような黒い髪を長すぎず、かといって短すぎないように伸ばした、中肉中背の人物。先生が着るようなスーツをカッコよく着こなした人物。彼の名前は日向ラファエルと言う名前であった。
「豆羽。約250名くらいの人を異世界に転生させるから、使い魔を借りたいのだが良いだろうか?」
「日向、か。良いぞ。そもそもそのために私は今まで彼らを育てて来たのだから」
そして私達は異世界転生者達に1人2匹ずつ配られた。まぁ、1匹だけなのもあったんですけど。それで残されたのは私と、タヌキツネの2名。そして私達はお互いに仲良くなって、そして2人揃って朝比奈さんに託された。
タヌキツネ、今は姫ちゃんでしたか? 姫ちゃんはとても可愛らしい、素直な良い子です。
朝比奈さんも良い人です。
彼らと一緒に異世界にて冒険出来る私はとても幸せです。
ですから、私は朝比奈さんが受けた洞窟の依頼へと向かった際の、野宿している時に
『ですから、その洞窟に居るボスモンスター、ヴェルモットクレイを倒さないと、レベル15になったら姫ちゃんが死んじゃいます!』
「……なんですか、それ」
私はそう言う月裏さんの報告を、呆然としながら聞いていた。