新しい魔王城の朝が来た
次の日の朝の朝食の時間、ナギサ・カワサキが【魔王城】の食堂にて僕達の前にて、こう話を切りだした。
「……【戦女神の対決の試練】。ナギサ・カワサキと、ナナミ・クジョウの両名共に準備が完了いたしましたので、いつでも大丈夫ですよ?」
と、食事を止めて、ナギサ・カワサキはそう話を切り出していた。
「ナギサ。残念だけど……ナナミはもう……」
「【魔王】様、大丈夫ですよ? 私は妄想と現実の区別が付かない残念な人ではありません。ですから、朝比奈さん達も存分に私に力を振るってくれて構いませんよ」
【魔王】であるリリーベル・フランベルの言葉にそう返事を返しておくナギサ・カワサキ。そして話を振られた僕達は食事を食べるのを止めて、なんと返せば良いか分からずに手を止める。
「あ、あぁ。こっちもギルドの依頼をこなして来たから、大丈夫そうだ」
「うん! ばっちり!」
「話の流れが変ですが、まぁ、おおむね大丈夫かと」
「……まぁ、戦闘もそれなりにやりましたしね」
「は、はい! だ、大丈夫です!」
僕達はギルド、【鋼の城】にて色々なクエストをこなして、チームワークと言う物はかなり上達したと思うし。
「……そりゃあ、重畳。午前中は少し、【魔王軍】としての仕事が多いですので、お相手は務まりません。どうやら本格的に、【勇者軍】と【教会軍】の共同による【魔王軍】との対決が始まるかもなのです」
と、ナギサさんが言うと紅葉がうんうんと頷いて、リリーベルさんの顔を見ながら言葉を発する。
「そうですね。その事はリリーベルさんが聞きましたが、大丈夫なのですか?」
「紅葉さん。確かに両方が攻めて来ると難しいけれども、【勇者軍】と【教会軍】は前日まで裏はどうにせよ、表向きは敵対していたんだよ。
足並みを揃えるのに、時間がかかる」
と、リリーベルが言い、「その間にこちらの戦力も整えるよ」と言葉を続けた。
「じゃあ、その間に僕達は【戦女神の戦闘の試練】をクリアして」
「……姫の、【在】の文字を貰いませんと」
【在】の印を取り、そして【前】の印も復活させる事で姫は完全体となる。ここまで来たら、もうひと踏ん張りである。
「……あぁ、そう言えば【教会軍】ならばもう少し時間稼ぎが出来るかもです。ワルダックが死にまして、さらに【勇者軍】との裏取引の帳簿が出て来たらしいです」
「そ、そんなのが出たら【魔王軍】とではなく、【勇者軍】と揉めますから、こっちも大丈夫……ですか?」
ナギサの言葉に疑問符を浮かべる月裏さん。それで戦争は遅れさせるだろうが、【魔王軍】の無事を祈れるほど確固たる事象では無いので、なんとも……。
「……まぁ、大丈夫ですよ。【教会軍】の内部は実はある神様が占領している感じですから」
「だ、誰!? 姫も知ってる神様?」
「……神様に知り合いが居るの? この狐は?」
「ムキー! ユリー、酷い!」
姫とユリーが小さな喧嘩を起こしている中、その言葉に顔が真っ青になる月裏さん。僕と紅葉が首を捻らせていると、
「……そう。教会の戦力の主力たる【戦術賢者】。彼らの信仰している神のほとんどは、試練を与えて自らを高みに導いてくれる試練の神様の主神、日向ラファエルさんだしね」
その言葉に僕と紅葉は大きな声で
「「えええええええええ!?」」
と叫ぶのであった。
【日向ラファエル】
修行好きや、試練を求める戦士などに好まれる神様。【戦術賢者】のおよそ4割が彼の加護を受けています。また、【戦術賢者】の中には彼が送り込んだ者も居るのだとか?