試練の準備期間
「……試練を開始するのは時間がかかります」
【戦女神の対決の試練】。
それが相手が倒れて気絶するか、死ぬかのどちらかでしか勝敗が決しない、至ってシンプルな試練。試練に対して、特に複雑な条件やルールは存在しないと言う事を説明したナギサ・カワサキはそう言った。
「……私達は二人組ですから。連携なども合わせないといけません。あなたがたのようにある程度、お互いにコンビネーションを取り合いながら戦っていたのならまだしも、こちらはまだ戦えるという程連携が上手くないのです」
「そうだったかしら? 【ナギサ・クジョウ】のコンビネーションの高さは優秀だと、報告にあったけど」
と、ナギサさんの言葉にそう口を挟んだリリーベルさん。そして紅葉も口を挟む。
「【ナギサ・クジョウ】の○○だと、最初に会った時の自己紹介で言っていましたから、てっきりコンビネーション抜群のコンビだと思っていたのですが?」
「普通はそう考えるだろう。僕もこの2人は多分、揃って戦うんだろうなとあの時思ったんだから」
月裏さんの頭を撫でながら僕もそう付け足して置く。……ともあれ、問題はコンビネーションの問題よりも相方であるナナミ・クジョウが既に亡くなっていると言うのに、二人組で戦おうと言っているナギサ・カワサキの方に問題があると思うのだけれども。
「……まぁ、【魔王】様。しばらくは【勇者軍】と【教会軍】が豆羽ユウトとワルダックの報告を受けてどう動くかと言う戦況待ちの状況です。だから、少しの間調整のために2、3日お休みをいただいてよろしいでしょうか?」
「まぁ、ナギサさんの言う通り、近々あの2つの軍に何かしら起きるのは確かで、こちらはそれを待っているだけだし。緊急事態までなら大丈夫よ」
「……ありがとうございます」と言ってリリーベルさんに頭を下げたナギサさんは、こちらへと視線を移す。
「……そちらも【烈】の印の効果を確かめたり、ユリエル姫の回復を待っていたりと色々と準備が必要なのでは? どちらにせよ、万全な状態で戦った方がこう言った戦闘系の試練に勝つ可能性は高いですよ?」
「「「確かに……そうだな(ですね)」」」
と僕達も納得する。今回の試練、【戦女神の対決の試練】は出来うる限り戦力を整えておいた方が良い。2、3日あればこちらもそれなりの戦闘技術を学べるだろうし、異論はない。
「……と言うよりも、毒で倒れているユリーの元に行った方が良いだろうしな。こちらとしても異論はない」
「……協力感謝です。では、【魔王】様、そして朝比奈揺様達。失礼します」
そう言って彼女は部屋を出て、自室……ではなく、中庭の方に向かって行った。【調整】とか言っていたし……戦いの勘でも取り戻そうとしているのだろうか?
「じゃあ、僕達はユリーの元に行きますね」
「はい、無事に助かってると良いですね。私も後で向かわせてもらいます」
と、月裏さんの頭から手を離してリリーベルさんにそう言って、紅葉と月裏さんと一緒に僕はユリーが寝ている部屋へと向かう事にした。
【ナギサ・カワサキ】
妄執を捨てきれない女……なのか?
【リリーベル・フランベル】
魔王とは思えないほど、心が広い優しいお方です。