暗殺者はどこに?
【魔王城】1階。玄関前。
ナギサ・カワサキは、リリーベル・フランベルとミコト・デスルードの2人に身柄を護送して来ていた。
「これでよろしいでしょうか、リリーベル様? ミコト?」
と、帰って来たナギサはそう言ってセメントで身体を固められたユウトとワルダックを連れて来た状態で、それを見に来たリリーベルとミコトにそう言った。ユウトは悔しそうな顔で、ワルダックは諦めた顔でリリーベルとミコトの2人を見つめている。
「ちっ……まさか姉ちゃんに捕まるだなんて」
「もう終わりだ……。私の教会での成り上がり計画が……」
「ご苦労様。で、ナナミは? ナナミを迎えに行ったんでしょ?」
「またいつものランニングか何かでしょうか?」
リリーベルとミコトの2人の言葉に、顔を下げたまま残念そうな顔で見つめる。
「彼女は……ナナミ・クジョウは死にました。相手が優秀で、悟られない内に彼女は殺されたんです」
その言葉にリリーベルは非常に残念だと言う顔をして、ナギサに話しかける。
「そう……ですか。彼女ほどの運動神経の持ち主が殺されるだなんて、相手はよっぽど優秀な暗殺者なんでしょうね」
また、ミコトも「そうですね」と哀しみの顔で同意する。
「彼女に見つからないように、頭を撃ちぬくだなんて、普通の人間には出来ない所業ですよ。相手は余程優秀な暗殺者だったんでしょうね」
その言葉に、リリーベルとミコトの2人は怪しげな顔をする。
「ミコト? どうしてナナミが殺されたのが、銃だと思うの?」
「しかも頭を撃ちぬいただなんて、知っているんですか? あなたが?」
そう。ナギサはナナミが殺された事だけを伝えており、リリーベルのように見つからないようにして暗殺者が殺したと考えるのは可笑しくないが、ミコトのように銃で頭を撃ちぬかれたと言う事は分からないはずなのだ。それが分かるのは実際現場に居た者しか分からないはずなのである。
「うぅ……」
「それに森で襲って来たアオモリポルポは、明らかに人為的に手を加えられた跡がありました」
「そう言えば……【勇者軍】と【教会軍】の情報を取って来たのは、ミコトよね?」
リリーベルとナギサは、明らかにミコトの正体に怪しんでいた。それに対してミコトが何か言い訳を考えていると、「はっ!」と気付いたユウトがミコトの方を見る。
「お、おい! お前、セグウェイだろ!? セグウェイ、俺を助けろ!」
その言葉で完全に敵だと判断したリリーベルとナギサの2人は、ミコト――――――いや、セグウェイを的に捕らえる。
「……いやいや、いや! 待ってください! これは豆羽ユウトが私をはめるための行為で―――――」
「も、燃えてください!」
戸惑うミコト(?)に、背中から火柱が走り、ミコトは燃え上がる。
「え、えっと……これで良かったですか?」
と、月裏さんがそう言い、リリーベルとナギサは月裏さんに親指を挙げてGJとサムズアップをする。
「……はぁ。昔からそうなんですよ。いつも、危険な所に自ら出向いて良かった試しはない。折角、ミコトさんとナナミさんを気づかれないようにスナイパーライフルで暗殺したのに、これで台無しです。表舞台はあまり好きではないんですがね」
と、炎の中からそんな声が聞こえて、中から1人の少女が物凄い勢いで跳んで来て、ユウトとワルダックをコンクリートを壊して、中から掴みだした。
燃えるような真っ赤な髪をツインテールにした小柄な少女。背中には大きなミサイルが付けられており、着ている青いジャンパーの左袖には拳銃、右袖にはスナイパーライフルが取り付けられている。
「初めまして、そして失礼します。私は暗殺と銃撃を兼ね備えて居る事から、豆羽ユウトの元に送られたモンスター、セグウェイ。ミコト・デスルードを倒して成り代わり、さらにナナミ・クジョウを殺したモンスター。でも、今日はこの2人の回収が私の主だった任務故に、少し距離を取らせてそのまま退散いたします」
そう言って、彼女はリリーベルとナナミ、そして月裏さんに拳銃の銃口を向けて、発射する。銃口からは白い煙が出て、3人の視界を塞いで、気付いた時にはセグウェイ、ユウト、ワルダックの姿はなかった。
【セグウェイ】
神の世界から豆羽ユウトへの贈り物。偵察に来たミコト・デスルードを殺して成り代わっていた。情報でスミガタケへと向かった所を、改造して襲わせるようにしておいたアオモリポルポで倒す算段だったが、上手い事行かずにユウトが捕らえられたのでナナミを殺す事になった。
沢山の銃が集まって形を成したモンスターで、暗殺と銃撃が得意。ナナミとナギサを襲ったのは、自分の身体の一部のスナイパーライフルを持たせて遠隔操作させておいた別人。
危険な事には少し距離を取ろうとする。
【ミコト・デスルード】
セグウェイ曰く、「銃撃戦ならば勝ち目が無かったですが、暗殺ならば一瞬で片が付く相手」との事。