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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
勇者になれなかった彼はしぶしぶ世界に反逆する事にしました。
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弔い合戦

「私の目的は、そこに居るユウト様とワルダック様だ。そしてそれを取り返すのに彼女の足の速さは厄介だ。だから、私は彼女を殺したのだが。何か問題があるかな、ナギサ・カワサキ様。とりあえず距離を取らせて貰いましょう」



「……だからって、殺すんですか!」



 と私、ナギサ・カワサキは血を流して死体と変わったナナミ・クジョウを握りしめながら、そう言い放っていた。



「そうだよ、彼女は邪魔だったから。ただ、それだけ。そして君も危険な存在だ。だから、ユウト様とワルダック様は助けるにしても君をなんとかしないといけないね。一旦、距離を取らせて貰おう」



 その言葉を聞いてナギサ・カワサキは理解した。相手は自分をこの2人から離れさせてその間にユウトとワルダックの2人を助け出すんだろうな、と思った。



(せめて、この2人はあいつには渡す訳にはいかない。じゃないと、ナナミが浮かばれない)



 そう言って、彼女はユウトとワルダックの2人を見る。



「お、おい! お前、俺に何かをしたら、先程の兎のように殺されるぞ!」

「そ、そうだ! 神は我々を見ているんだぞ!」



 うるさいなぁ、この2人。一旦、黙らせるか。



「セメント・ブロック」



 私はそう言って、手を彼らに向ける。すると私の手からセメントが出て来て、彼らの身体を包み込んでいた。そして彼らは頭以外をセメントによって固められて、縄以上に動けなくなってしまっていた。



「……セメントを使って、身動きを取れなくする。なかなかですね。けれども、そんな事では私を捕まえられませんね。たかがセメントを出す能力では私を倒せませんよ」



「そうだね。でも、それだけの能力では無いんですよ。私は」



 そう言って、私は眼を細めて手に力を込めて「喝ッ!」と言う。すると、私の手には、先程まで無かった武器があった。

 スナイパーライフル。どうやらこれが彼女、ナナミ・クジョウの命を奪った武器のようだ。なにせ、私は敵の物を盗んだはず(・・・・・)だからである。



「……あれ? 武器を奪われた? なるほど、【形泥棒】の泥棒とはそう言う事」



「その通りです」



 そう、これが私の2つ目の能力。相手から物を盗む能力。



 セメントを自由自在に出すのと、相手から物を盗む。それが私の今の(・・)能力なのである。



「まぁ、今ので形は(・・)覚えた(・・・)



 私はそう言って、スナイパーライフルをセメントで固めて放り投げて、そのスナイパーナイフルと同じ形で同じ機能の武器をセメントで練り上げる。

 うむ。少し重いが悪くはない。



「相手の武器を盗んで、形を覚え、さらにはその武器を作り上げる。

 【形泥棒】、お見事です」



「人殺しなんかに褒められても嬉しくはないけどね」



 「そう言うなよ、同じ犯罪者の癖して」と言うナナミを殺した奴の言葉に私はムカッとして、そして反省した。



 確かにそうだったからだ。

 私は犯罪者。生前は誰のためでもなく、自分のために物を盗んで、そしてそれの贋作を作り上げて売っていた犯罪者。故にこのような能力を得てしまった罪人。そんな私が、ナナミを殺した奴を「人殺し」と罵る事は出来ない。

 自分もそうだからだ。盗みの際、邪魔だった人間を殺した時もあった。



 盗みに美学なんてない。盗みとは、己の欲求を満たすだけの行為だ。



 生前の私はそう思っており、モンスターと化した今でもそう思っている。



「あなたは泥棒、犯罪者、罪人。私を人殺しと断じる事は出来ない。

 ……まぁ、距離は取らせて貰おう。スナイパーライフルの性能は自分が良く知っている」



「そう。あなたを人殺しと断じる事は出来ない。そんな資格は私には無い」



 けど、彼女は。ナナミ・クジョウは。



 そんな私を相棒だと、親友だと思って接してくれた。生前の罪状を「今は関係ないよね?」と笑って励ましてくれた。彼女は多分、バカだ。深く考えてないから、私にそう軽く言えたのだろう。

 でも、そんなバカに救われた罪人が居るんだ。



「――――――ナナミの無念はここで晴らします」



 私はそう言いつつ、スナイパーライフルを覗きこみ、さらに距離を取ろうとする犯人めがけて引き金を引いた。



 呆気なく犯人は倒れた。



 私は「ふぅ……」と小さく息を吐き、ナナミの死体を抱きしめた。



「ナナミ……(かたき)は取ったよ」



 私はその後、ナナミの身体を埋葬し、セメントで動けなくなった顔だけ出した状態の彼らを引きずって魔王様の元へと向かった。

 彼らの身体は、意外に軽かった。

【軽かった】

 セメントはそんなに軽くはない。だから、可笑しいんですけどね。

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