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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
勇者になれなかった彼はしぶしぶ世界に反逆する事にしました。
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アオモリポルポ(3)

 猛毒の墨の水流が壺の中から何本も勢い良く飛んで行き、僕達を襲う。そしてそれから避けようと動いた僕達の方に、アオモリポルポの10本の足が襲う。



「まさかあんな事になってるとは……」



 と、紅葉の言葉に同感という意味を込めて僕は頭を小さく上下に振って紅葉に伝える。



 あの水流は実はアオモリポルポが放っているのではない。壺の中の装置が放っているのだ。



 ユリーが猛毒の墨を喰らった時、姫が「中に居るのかも!」と言った。墨を出す場所は全部切り払っていたから、中に居るアオモリポルポと同類のモンスターが猛毒の墨を放っているのではないか。姫が提示したのは、そう言う可能性だった。そして月裏さんが「ほ、炎を纏って中を明るく照らします」と言い、姫も「する!」と答えた。

 その言葉に僕は「いや……止めとこう」と答えた。



 もしかすると、あの壺の中には起爆性の物が詰められていて、炎を放ったら引火するかもしれない。そう思っての事だった。そして紅葉にあの中を炎以外の魔法で照らしてくれと、頼んだ。紅葉は頷いて、水の魔法で水の球を作って、宙に浮かべて壺の中まで誘導して破裂させる。



「―――――――――水よ、中の状況を探り我々に伝えよ」



 この魔法は攻撃の呪文ではなく、調べたい場所に魔法を放って破裂させ、中を探らせるというタイプの魔法らしい。そして紅葉は答えた。



「あの中に自動的に墨を発射する装置があります」



 と。



 どうやらあのアオモリポルポは誰かに飼われていたか、調教されているようだ。そうでなければ、壺の中に自らの猛毒の墨を発射する装置なんて作れないし、それをピンチだから動かそうという発想にもならないはずだ。



「い、行きます!」



 月裏さんは火炎を纏った状態で、壺の中に突っ込んでいく。僕達の中で猛毒を浴びても無事なのは、灰となって復活する不死性を持った月裏さんだけ。猛毒を浴びても良いという形で、壺の中に特攻をかける。



「シュー!」



 しかし、アオモリポルポがその前に10本ある足で彼女を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされた月裏さんはその場で再生する。不死性だからと言って、別にダメージが通らない訳でも、吹っ飛ばされない訳でもない。ただ、毒を浴びても無事なだけ。アオモリポルポはそれを本能か何かで理解しているのか、絶対に近寄らせない。僕も聖剣で墨の軌道をずらしながら、壺の中へと行こうとするが、アオモリポルポは僕も防いでいる。



 姫と紅葉の2人は札と魔法で援護しようとするが、その前に姫達、もしくはユリーに猛毒の墨を浴びせようとするのを防ぐので、精一杯なようだ。



「シュー!」



 ちょこまかとすばっしっこい僕達の相手に飽きたか、それとももっと効率が良いと思ったのかは知らないが、アオモリポルポは直接足を伸ばして姫と紅葉を狙いに行く。



「ま、拙い!」



 僕も援護に向かおうとしたら、その隙をついて壺の中の自動墨発射装置が僕をとらえて墨が水流となって発射される。



「「あ、朝比奈さん!」」



 紅葉と月裏さんがそう言い、



「ゆらぎん!」



 姫がそう言う。



 土の壁を作ろうとするが間に合わないと考えた時、



 ガキン!



 と言う金属音のような硬い音が聞こえて来ると、墨はあろう事か僕の目の前で何かに遮られるようにして、こちらへと来なくなっていた。



「シュー?」



 アオモリポルポが足を持って壺を近付けて、僕へと墨の威力を増させるが、それでも一定ライン以上からは僕のほうに墨は入って来ない。まるで見えない壁に防がれてるかのように。



「全く……。私の招待客をなんという形でやっているんですか。彼らにはこの件の、そう、【勇者軍】と【教会軍】が手を組んでいる事を証明してもらえませんと。なにせ、【魔王軍】の者がそれを言うと、『陰謀』と言われますしね。

 それに彼らは友人ですから、彼らには生きていて欲しいのですよ」



 そう言って、僕達の危機に現れたのは、【魔王軍】のリーダーの魔王、リリーベル・フランベルだった。

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