アオモリポルポ
黒き森林、スミガタケの主、それがこの全身緑色の巨大なタコのようなモンスター、アオモリポルポ。頭には全身が緑色の苔に覆われている壺を被っており、顔についた自前の口以外にも8本の足の先にはそれぞれ1本ずつタコの口が付いている。そしてその口が付いた8本の足を僕達に向けている。
「シュー! シューシュー!」
アオモリポルポはその口から墨を発射してくる。僕と姫はその墨を慌てて避けるように動き、紅葉は水の魔力を使って防御膜を作ってその墨を防いでいた。ユリーはと言うと、長刀・ボルケーノを放って木に紐を巻き付けながら、木の上に跳んでいた。
アオモリポルポはそれに怒って出鱈目に墨を発射する。墨は木に当たり、木は真っ黒になって悪臭を放っている。そして所々の枝が腐って地面に落ちる。
「……大変。2人が逃げた」
と言う木の上から覗いていたユリーの声。ユリーは突然のモンスターの登場の最中も2人を見ており、ユウトとワルダックの2人は既にアオモリポルポの登場で逃げ出してしまっていたようである。そう言えば、リリーベルさんとクジョウさんが居ない。多分、2人が彼らを捕らえに向かったのだろう。
「……この森の主、アオモリポルポ。その9つの穴から出される物凄い勢いの墨は、上級の冒険者でも手を焼く存在。なにせ、あの墨は猛毒」
「森の主が何となく嫌な臭いで誘い出された、と言う感じですかな?」
紅葉はそう言葉にすると共に、防御膜を解除した彼女はそう言う。そしてユリーはと言うと、長刀を持ってアオモリポルポへと向かって行く。
「シュー、シューシュー!」
アオモリポルポは縦横無尽にタコのような足を振るい、その足に付いた口から大量の墨を発射する。発射された墨をユリーは長刀・ボルケーノに火炎を纏わせて高速で回転させて防ぐ。そして高速で回転させながら、火炎によって墨が蒸発する。
「と言うか……このモンスターはなんなんだろう?」
「ど、どうしたんですか、朝比奈さん?」
「いや……なんだか。このモンスターがあまりにも凶暴な事にだよ」
ただ【退魔香】を嫌って現れたにしては、あまりにも乱暴的な趣でちょっと怖いくらいに思えて来るのである。けれども今はアオモリポルポを何とかしないといけない。そうでないとアオモリポルポによって僕達が倒されてしまうのだから。アオモリポルポは8本の足を振るいながら、墨を吐き続けている。
猛毒な墨を吐いているため、僕達は慌てて逃げるがアオモリポルポは学習し始めたのか8本の足を器用に使いながら、僕達を追いこんで行く。
「……これ以上は無理」
長刀・ボルケーノを高速回転して防いでいたユリーだったが、疲れてもう回転が出来ないらしい。そして跳んで逃げた所をチャンスと思ったアオモリポルポは自前の口から、墨の塊を発射する。墨の塊は真っ直ぐに、跳んだユリーの元へと向かい、
「……アイスバーグ」
長刀・アイスバーグにてそれを一刀両断するユリー。
「シュー! シューシュー!」
怒ったアオモリポルポは、何を思ったのか自分の頭の上にある苔だらけの壺を掴んで、その壺を取り外した。取り外すとその壺の中から新たに2本の口付きの足と、三角形に尖った真っ白な頭が現れた。
「シューシュシュ! シュッ、シュシュ、シュー!」
そして全部の足から物凄い勢いで猛毒の墨を出して、宙へと飛ぶアオモリポルポ。
「……足が10本で、三角形な真っ白な頭。タコではなくて、イカかよ。こいつは」
森の主は大量の墨を発射しつつ、僕達を怒りの瞳で睨み付けていた。
【アオモリポルポ】
黒き森林、スミガタケの森の主。
全身緑色の巨大なタコのようなモンスター。頭には全身が緑色の苔に覆われている壺を被っており、顔についた自前の口以外にも8本の足の先にはそれぞれ1本ずつタコの口が付いている。10本の足は大量の墨を物凄い勢いで吐き出して、宙を飛んだりする事も出来る。
足や自前の口から吐くのは真っ黒な猛毒の墨である。壺の下には2本の口付きの足と、三角形に尖った真っ白な頭を持っている。これは足を8本、三角形に尖った真っ白な頭を隠す事で、自らをタコだと思い込みたいものだと思われる。コケを身に纏う事は白い身体から目を背けるための行為。
分類上はタコではなくて、イカ型のモンスターである。