介入
そんな彼、朝比奈揺さんはギルド、『鋼の城』の依頼によって洞窟へと向かっている。
「えっと、確かあの洞窟は……」
向かおうとしている洞窟、名前はイスール洞窟。通称、初心者洞窟。出て来る魔物はレベル3、4くらいのモンスターが多数出る洞窟であり、初心者向けに適した洞窟。恐らくそれを見据えて、『鋼の城』の人達もそれを分かった上でここを選んだのだろう。
確かボスモンスターは……
「……っと、あった」
ゴブリンエリート。レベル7。2mを越える、肥えた豚のような魔物。巨大な黒槍を持った魔物で、体力と攻撃力がレベル7にしては少し高いが、スピードや防御力に欠ける魔物で、初心者向けのボスにしては丁度良いくらいの強さを持っている。
「レベル7……ですか。これなら少しくらいならばレベルを上げても良いでしょうかね?」
私の主な役割は、調節。レベルが高すぎる場合は少し低目にして、低すぎる場合は高めにする。無駄な罠は処理して置き、ダンジョンを支配しようとする者がいたらその者を退かせる。それが私の役割である。
「……うーん、これならレベル9くらいでも良いでしょう」
今の彼らのレベルは朝比奈揺さんは3、姫と紅葉は8。3人の平均レベルは6。
ダンジョンで数レベル上がると考えれば、ボス魔物のレベル7と言う強さは少し低すぎる。故に私はそのレベルを9にして、それなりの調節を付ける事にしました。ドロップアイテム、所謂魔物を倒したら落とすアイテムをレベル9のボス魔物が落とすようなアイテムへと変えていた。
「―――――――よし。後はあの3人がダンジョンを攻略する事を願って」
「あぁ、少し待ってくれないかい」
と、モンスターのレベルを変更しようと考えていた私の目の前に、日向ラファエルが現れる。現れた日向さんはいつものようなニコリとした笑顔を向けていた。
「そんなのは、ちっとも試練とは言わない。と言う事で、その変更をこっちにしてくれないかい?」
彼はそう言って、私に書類を渡す。渡された書類を見ると、そこには彼が何を言いたいか分かってしまった。
【ヴェルモットクレイ Lv.9】
そのモンスターはとある世界でラスボスレベルの強さを持つモンスターで、その強さは異常である。なにせ、そいつには
「このモンスターって……!」
「そう。ヴェルモットクレイ。
全ての攻撃を無効化する攻撃耐性と、全ての魔法を反射する魔法無効化耐性を併せ持つ、本来であればレベル70クラスのボスモンスターだね。まぁ、レベルは9にしたし、同じくボスモンスターだから良いんじゃないかな?
まぁ、攻撃耐性と魔法無効化耐性はあるけどね」
ニヤリ、と意地汚い笑みを日向ラファエルはしていました。
「これは……なんです? これは本当ならばこんな場所で出すべき魔物じゃないですよね?」
「なぁに、他の皆にはちゃんとした試練を与えているだろう。試練の神の名の下に。
けれども彼にはそう言った試練をまだ与えてなかったですからね。ここらで一丁、試練でも与えようかと思いまして」
と、日向ラファエルはいつもの様子で、何事も無かったかのように言っていた。
気付いたら昨日の日間ランキング6位でした。皆さんのおかげです。
これからも応援よろしくお願いいたします。