ナギサ、電話する
「はい、もしもし……?」
黒塔都市サルファイアの裏通りの道、【形泥棒】のナギサ・カワサキは鳴りだした真ん中に【神】と書かれた携帯電話、【神電話】を取り出して耳に当てる。
『私だよ、ナギサ。日向ラファエルだよ』
その電話の主は、試練の神の主神である日向ラファエルであった。ナギサはなんとなく自分に電話がかかった理由を思い浮かべて、それを聞いてみる。
「もしや勝手に試練を作った事を怒っているのですか、ラファエル様」
『そうに決まっているだろう。この、神の力によって通信が可能となるどんな場所でも通話可能な電話、【神電話】を使う用と言ったらそれしかない』
どうやら少し怒り気味のご様子と、静かな怒りを感じる声で話すラファエルからそう思ったナギサ。だからとりあえず謝る事を決めたナギサ。
「どうもすいませんでした、私が悪うございました(棒)」
『棒読みで聞こえるのは何故だろうな……。まぁ、良い。【伝説の魔力球の試練】を本当にクリア出来るのならば、【烈】の文字を与えても良いと思うし。それにあの試練もちゃんとやるんだろう?』
「それは【在】の文字を渡すと言う事で手を打つつもりです」
『……。まぁ、お前に任せたのは私だしな。と言うか、今回のメンバーは流石に失策だと思うわ。
ルール好きのアイスローカル・バーンアーバン。そして、お前だしな。ナギサ・カワサキ。通称、【怪盗カワハギ】。いつの間にか物が盗まれていると言う魚のカワハギのような奴め……』
「それは生前の私です。モンスターとして生を受けた私は、アイスバーンさんのようにある種のモンスターと融合して生まれましたし」
そう。アイスバーンさんは蚊のモンスターと融合したように、ナギサもとある種のモンスターと融合して誕生したモンスターである。何のモンスターかは割愛するが、ともかく今の彼女は自身は生前とは違う事を言いたいみたいである。まぁ、【怪盗カワハギ】と言う泥棒時代の癖は抜けてないと思うけれどもと、ナギサは心の中で思っていた。
『……まぁ、良い。それよりもユウトの件だ。月裏オボロと豆羽ブレイドの2人の神の祝福を受けてしまっている豆羽ユウトに、なんとかして一撃を食らわせてくれ。もし出来るのならば、お前のあの能力を使っても構わない』
「……了解。出来ればそれは避けたいですがね。私は【在】を渡しても、豆羽ユウトを倒すまでこの世界に居る予定ですが、出来れば使わずに終わりたい物ですね。こちらにも負荷がありますので」
そう言って【神電話】を切るナギサ。
「……本当に使わずにすみたいですよ。あっ、そう言えばこれからクジョウと一緒に魔王様の拠点の掃除がありましたね。急がないと怒るかな? クジョウ、怒りっぽいもんな」
そう言いつつ、彼女はクジョウを探しに行くのであった。
【神電話】
神様が作った神界からどこでも繋がる電話。配下の者の指令を極秘裏に行うために作られたとか、単に暇つぶしで作られたとか色々な説がある。