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神様の日常

 神とはすなわち縦社会であり、労力社会である。どれだけ人間に対して功績を務めてきたか、どれだけ人間に敬られ崇め奉られてきたかが神としての神格を、すなわち神の間での権威を表す。

 たとえその神がどれだけ善人であろうとも、神としての功績や知名度がない神は廃れていき、たとえその神がどれだけ悪人だろうとも、神としての功績や知名度があれば上に上がる。



 私こと裏方の神、月裏ラキナエルはその筆頭たる神を知っている。



 闇夜に溶け込むような黒い髪を長すぎず、かといって短すぎないように伸ばした、中肉中背の人物。先生が着るようなスーツをカッコよく着こなした人物で、ここまで聞くとただのまともそうな者に聞こえるから不思議である。

 問題は顔だ。右半分が大やけどを負っており、左目は懐中時計のような物で針がかちかちと回っている。そしてニヤリといつもの嫌味な笑い顔。

 彼こそ、総勢249名の学生達が乗ったバスを奇妙な集団玉突き事故に見せかけて殺し、異世界転生をさせ、今もなお年間100名以上の人間に試練を与える、試練の神、日向ラファエル、その者であった。



 彼は転生者たちからあまり良い反応を得ていない。何故なら彼がそれだけ残忍だからだ。例を挙げて説明していくと。



 ある1人の学生は神聖魔法を持った人間という立場を選び、日向ラファエルが決めた異世界に飛ばされた。その世界ではエルフしか神聖魔法が使えず、今その学生は牢獄で必死に弁明を続けている。

 またある1人の学生は『白面九尾の狐』と言う使い魔を選び、日向ラファエルが決めた異世界に飛ばされた。その『白面九尾の狐』は人間に激しい憎悪を持っており、その学生は異世界に飛ばされた瞬間、『白面九尾の狐』に足を噛み千切られ、その使い魔は逃走した。

 さらにある学生は非常にスキル選びが上手く、数年経てば最強のエルフとして名をはせるだろうと言われるくらい、その学生はエリートだった。その学生は1週間以内に悪魔の進行を退けないといけない世界で、7週目の世界で防衛を行っている。



 人に決して楽に冒険を行う事をさせず、必ず試練を、そして苦痛を与えようとする神、それが日向ラファエルだった。今も彼の耳には、彼の事を罵る249名、いやそのずっと前に転生させていた何千名にも渡る異世界転生者から、念話にて暴言を吐かれているのだろう。

 そしてそんな状況でも、彼は決してニヤリとした笑いをやめたりはしないのだ。



「ふぅー……」



 と一息吐いたらしい、日向ラファエルが私の近くにやって来た。相変わらずの嫌味な笑顔を浮かべて。



「そっちの状況はどうだい、月裏? 余り物ばかりで異世界転生させた、朝比奈揺君のご様子は……」



 多分、彼は今もなお朝比奈さんに試練を与えようと思っているのだろう。今は試練を与えるチャンスを狙っているみたい。

 もう既に彼は、この日向ラファエルによって、”多くの試練を受けているというのに”。



「別に関係ないです。そもそもあなたが言い出したんですよ?

 残ったスキルや使い魔を彼に押し付けて、異世界転生させようって。彼が可哀そうだとは思わないんですか?」



「可哀そう? 可哀そう、だって!」



 それを聞いて、日向ラファエルはけらけらと笑い始める。



「月裏さん、私達は神です。人の姿に似てはいますけれども、我々は神であり人間とは別種の存在だ。人間では無い、ただの神だ」



「……っ!」



「認めろよ、月裏さん。私達は神であり、人間を統治する存在だ。

 神は神でしかない。神は人間に肩入れしすぎる事はしてはいけないんだよ」



 そう言って、日向ラファエルは「ハハハ……」と笑っていた。狂っている、狂いすぎている。と、私はそう思っていた。



 日向ラファエルは元々試練の神として人間社会に色々な試練を与えて来た。

 有名な所で言うとノアの方舟の試練、原因不明の死の病気、関東大震災。

 彼は数々の試練を与えて来た。他にも人間達に色々と試練を与えて来た。



 しかし日向ラファエルは試練を与えて、その試練をこなす事で人間の成長を促して来た。試練の褒美としてちゃんと、人間の成長を促して来た。故に神様としての功績は、彼の方が上である。

 故に彼は私や戦恋さんよりも高い。けれども私は彼を尊敬するとは思っていなかった。

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