居ても居なくても良い豆羽
【蛇の神の主神】、豆羽ウロボロスは数多く居る豆羽の中でも【自分】と言う一人称を使う端末である。そして自意識過剰の端末である。
緑色のくねるようにウエーブがかった髪と、赤い蛇のような形をした瞳をした金色のローブを羽織った男性、ウロボロスは、力強く自身の持論を展開する。
「【自分】が司る蛇と言うのは、この世界における最高の生物である。
毒を持ち、擬態し、なおかつ地面を這いながら行動出来る最強の生命体、神として崇められる時もあるこの蛇とは最高だな」
そう言いながら、パクリと毒蛇を食べるウロボロスを見て、同じ豆羽の端末である【銃の戦女神】、豆羽イッパツは「はぁ……」と溜め息を吐く。
茶色の西部劇みたいなカウボーイ衣装を着た、カウボーイハットを被った拳銃のような顔をした女性、イッパツはそれに対して自身の論理を展開する。
「【ミー】は流石にそうとは思えないよ。最強の生命体はやっぱり人間だよ。人間ほど残忍で冷酷でずるがしこい人間は居ないよ。だから、【ミー】は最強の生命体は人間……」
「いや、蛇! 絶対に蛇だと【自分】は宣言する! 蛇なんだ! 最強は蛇であるべきなんだ!」
と力強く言うウロボロス。それに対して「はいはい」と言うイッパツ。
「そう言えば……オペラの姿が見えないけど……あいつ、どこに行ったの?」
「……結構前から居ないよ? 確か【自分】が知る限り、30年前には姿を消してたよ?」
「【ミー】はつい3か月くらい前に見たよ。何でも、【【私様様】は今より日向ラファエルの指揮下に入る。だから、しばらく旅に出るよ】と言って姿を消した。【ミー】はウロボロスが30年も姿を見てないのが驚きだよ。
……一応、あんな影が薄いのでも豆羽の端末なんだしね」
「……【自分】もそう思う。では、失礼します」
そう言いながら、豆羽ウロボロスと豆羽イッパツの2人は今頃同じ豆羽の端末である【仮面殺しの死神】、オペラがどうなっているかを一瞬考え、
「「……まぁ、良いか」」
と話を切り替えるのであった。
「それよりも問題とすべきなのは、リッチの紅葉だよね。あんな影が薄くて、居ても居なくても可笑しくない豆羽関連の神様よりもさ。その方が芸術的に大事な事ですよ。だと思わないかい? 【巳】はそう思ったりするんだけどさ」
そんな2人の間に黒い和服を着た筆のように長い黒髪を伸ばした乙女、【芸術の神の副神】、豆羽ベールは2人に近付く。
「……ベール?」
「ベール?」
と、豆羽ウロボロスと豆羽イッパツはきょとんとした顔でベールを見て、
――――――――ザクリと、倒される。
「全く……こんな末端にまでオペラの事がバレてるなんて、最悪だね。今までも【手前】の一人称を使う【大槌の戦女神】である豆羽サクラ、【俺】の一人称を使う【鍛冶の神の副神】である豆羽ヘスティアも殺しちゃって、残りは13人か……。
次からは【巳】も気を付けようかね。あぁ、まぁ……良いか。
……どうせ【巳】は端末だしね。芸術活動もありますし。さて、こんなのは良いか。後はオペラに任せよう。アイスバーンを倒した後、彼らが戦うのはオペラ……になるんだろうからね」
そう言いながら、ベールはイッパツ、ウロボロスの頭を握りしめ、そのまま消えた。