目覚めたらそこは……
再び僕が目を覚ますと―――――――目の前に広がっていたのは、赤黒い空だった。
「ここは……」
「あれ……?」
「どこですか、ここは?」
「……赤黒い……空」
「わ、私達は一体……」
僕が起き上がると共に、姫、紅葉、ユリー、月裏さんの4人もまた一緒になって起き出した。
周囲の状況を確認すると、赤黒い空。黒く焼け焦げた焼け野原。そして黒く汚れた海。そして座ったままたたずんでいる黒髪の美少女。
小柄な身体の足元まで伸びる薄い漆黒の黒髪と黄緑色のリボン、藍色の瞳と人形のように整った顔。そして白いカッターシャツと黒いスカート。そして左の胸元からは【烈】、右の胸元からは【在】と書かれたリンゴをぶらさげている。
(まさか……アイスバーンさんが言っていた姫の九字の印のうち、【烈】と【在】の2つを持って行ったモンスター?)
「気が付きましたか。良かったです。アイスバーンの眼を盗んでここまで連れて来るのは大変でしたが、まぁ、皆さん無事でなりよりです。……間違えました、なによりです」
と、彼女はそう言ってこっちを見る。
「えっと……自己紹介を始めますね。私の名前は九条渚……間違えました。ナギサ・クジョウと申します。アイスバーンとはそれなりの仲にあるモンスターであり、あなた方をここまでお連れした者です」
ぺこりと頭を下げるナギサさん。
「えっと、ここはどこですか?」
と、質問をする紅葉。それに対して
「ここは緑豊かな、青空広がる綺麗な海が見える丘です」
と答えるナギサさん。
えっと……緑はどこにも無いし、空は赤黒いし、なにより海は真っ黒なんですが……。
「間違えました。緑豊かな、青空広がる綺麗な海が見えていた丘です。だいたい、今の世界の風景で間違いないと思います」
「これ!? これが今の世界?」
「悲鳴さん、その通りです。……間違えました、姫さん、その通りです。これが今の世界です。いえ、違いますね、ここはそうなってしまった世界と言うべきでしょうか」
「これが今の世界、なのか? どうしてこんな……」
「それは朝比奈さん、あなたが一番ご存じでしょう。……いえ、一番状況を理解出来ると言いかえるべきでしょうか?」
僕が一番、ご存じ……?
あの赤黒い空も。
この緑がどこにもない丘も。
その黒い海も。
この中で僕が一番理由を知っている?
「ど、どう言う事か説明をお願いします」
「……私達にも分かるように」
月裏さんとユリーがそう僕に問い詰めるように言うが、僕にだって分からない。
僕はアイスバーンと戦闘をして、そして身体を氷漬けにされて……それから目が覚めたらいきなりこんな所に居たのだ。状況なんて掴めない。
「――――――混乱しているようですね。では、ツキーさんと百合裏さん……間違えました、月裏さんとユリーさんには私の方から説明しましょう。
この世界は既に滅んでいる。―――――いえ、半分滅亡したと言い換えるべきでしょうね」