真の多次元相撲
「まずは距離を取る」
そう言って、アイスバーンさんは後ろに跳んで僕から距離を取る。二剣流の弱点が速度の遅さだと言う事も日向ラファエル経由でバレてしまっているのだろうか?
「名付けて、炎蛇射」
そう言って、アイスバーンさんは銃に赤い銃弾を込めて、そのまま発射する。銃から真っ直ぐに火炎の光線が蛇のように幾つも曲がりながら僕の方に向かって来る。
「二剣流ではかわせないな。ならば、大剣を解除しよう」
僕はそう言って、大剣を腰に戻して聖剣を持って光線を避けて、そのままアイスバーンさんの方に走って行く。
「近寄ってきて接近戦? けれども、私の能力はもう覚えているのでは? 触れて剣を古くしましょうかね? では、距離を詰めよう」
そう言って、アイスバーンさんは僕の方に跳んで来る。
「……不味いな」
アイスバーンさんの能力は文明を強制的に衰退させて、文明を強制的に発展させる能力。その能力でこの大剣と聖剣の文明を衰退させて、僕の攻撃力を下げるつもりであるかも知れない。ならば、触られないように
(地面を相手の身体の足の裏以外の場所に、ぶつけないと!)
そうしないと、僕は勝てない。
「地面よ! 僕の意思に従え」
僕は彼女の背後の地面に魔力を纏わせて、そのまま地面を魔力で盛り上げてアイスバーンさんの方に飛ばす。アイスバーンさんの背中に向かって行く地面。
(よし、これで!)
「甘いですね、甘い。そう簡単にこの試練はクリアは出来ませんよ?」
アイスバーンさんはそう言って、パチンと指を鳴らす。すると彼女の背後からいきなり何かが現れて、その地面の攻撃を防ぐ。その何かとは何かの建物の壁だった。
「衰退させておいた建物の壁を、再び発展させて地面での攻撃を防いだだけです。またこんな攻撃も出来ますよ?」
そう言って、またアイスバーンさんは指をパチンと鳴らす。すると、いきなり僕の身体に衝撃が襲って来る。
(ぐっ……!?)
地面に足の裏以外の場所をぶつけないようにして、足の裏を付けて滑るようにしてぶつかった何かを確認する。
「これは……鉄骨?」
そこにあったのは、僕の血が付いた鉄骨。僕の後ろの地面の中に衰退させておいた鉄骨を埋めて置いて、発展させた鉄骨をぶつけて攻撃したと言う所か?
「おやおや、足の裏以外をぶつけずに上手い事やりましたか。と言う訳で、この増設港街テセウスの地面には多くの文明の産物を埋めて、いつでも攻撃出来るようにしております。勿論、その中には建物の残骸だけでなく、機械、それに武器なども混ぜておりますし、私はその位置を全て把握しております。これこそ、どこから攻撃が来るか分からない真の【多次元相撲の試練】の真骨頂!
朝比奈揺さん、くれぐれも地面にはお気を付けて」
そして、地面から顔を出した幾つもの銃口がこちらを向き、そして自動的に発射された。
「……ッ!」
僕は慌てて土の壁を銃口の前に直接作り出し、そしてそのまま『闇』の魔力を使って引力を地面に生みだす。そして、生みだされた引力は彼女の身体を強制的に引き寄せる。
「おっと……」
アイスバーンさんは慌てるが、もう遅い。『闇』の引力はもう彼女の身体と地面を引き寄せあっているのだから。
「そのままぶつかれ!」
そして引力は彼女の身体を引き寄せあって、彼女の背中と地面がぶつかった。
「かはっ……!」
「これで勝てた!」
僕はそう言うのであった。