目覚めたら廃墟でした
目を覚まして初めに視界に映ったのは、雲一つない青空だった。
「……」
辺りを見渡すと、そこには何も無かった。いや、建物がと言うべきだろうか。
壊している途中の建物や、作りがけの建物も。作られていた建物も。船も、店も、舗装された道路も。全てが、文明の産物である物はどこにも無かった。装備や服、アイテムなどは大丈夫だったけれども、それ以外のこのテセウスの建物を思わせる物は何も無かった。
「これは……? どう言う事?」
下を向くと、屋根の残骸や廃墟と化した建物、崩れ落ちた船などが地面に落ちている。これってもしかして昨日眠りについた宿だろうか? そうだとしたら、まさか……この瓦礫の下に昨日寝た皆が!?
「だったら、早く助け出さないと!」
「その必要性はありませんよ」
と、背後から声がすると思ったら、そこに居たのは
「アイスローカル・バーンアーバン!」
「長いですね。呼びやすいようにアイスバーンさんと呼んで下さいな」
姫、紅葉、ユリー、月裏さんを載せた荷車を引きずっているアイスバーンさんだった。もしかしなくてもこれは彼女の仕業だろう。でも、どうしてこんな事を……!
「そんなに睨まずに、むしろ感謝して欲しいですね。あなた方の部分は特に激しく衰退させて分解し、傷一つ無いようにしたんですから。
まぁ、目覚めたらこのありさまは驚きますか」
「当たり前だろう……」
「ですよね。私はルール違反が大嫌いなんですよ。ルールとは自分を、相手を、守るために作られた物。それがルール。ルール違反とは自分だけでなく、相手まで危険にさらしてしまう。ですから、私、どんな小さなルール違反も許せないんです。『仏の顔も三度まで』と言うことわざがあるように、心の広い私は3回までは許します。
けれども、彼らは3回ルール違反をしてしまった。自分達が呼んでいない人間を試練に巻き込もうとした違反、2回。そして昨日の夜、あなた達が寝静まった後、あなた方の力を無理矢理借りようと魔法で操って私を殺そうとした違反の合計3回。これであの方達は違反しすぎた」
―――――――だから殺した。当然の報いです。
彼女は笑いながら、そう言った。
お、可笑しいだろう。確かにルール違反は悪い事だとしても、ここまでされるいわれがあるだろうか。いや、ない! 絶対、ない!
彼女のやっている事は『ルール違反』を言い訳にしたただの暴力だ!
「……理解出来ない。僕は、そんな事は理解出来ない!」
「あぁ、安心してください。【多次元相撲の試練】に関しては未だに継続中。街がこんなありさまになってしまいましたが、あと5日以内に3回の挑戦権で私を倒せば試練はクリアです。いつ、いかなる時でも私は挑戦をお受けいたしましょう」
「じゃあ今、勝負しろ! 僕がお前を、アイスバーンさんを殺してやる!」
僕はそう言いつつ、聖剣・ヒカリと大剣・無銘を構える。
「怒ってます? まぁ、良いですけど。まぁ、【殺してやる】と言う表現は物騒なので、今後は控えるべきであると忠告してあげましょう。
では、【多次元相撲の試練】、開始といたしましょう」
彼女はそう言いつつ、荷車から手を離して銃を構えた。