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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
Super Seisyun Seikatu
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テセウス・真夜中の戦闘

 【多次元相撲の試練】について朝比奈揺達がこれを仕掛けた日向ラファエルの思惑について交錯しているそんな頃。

 夜中の増設港街テセウスの街中にて、アイスバーンさんは多数の冒険者に囲まれていた。剣を持った冒険者、銃を持った冒険者、鞭を持った冒険者、杖を持った冒険者など武器は違えど全ての攻撃の矛先はアイスバーンさんに向いていた。

 そんな彼らにアイスバーンさんは尋ねる。



「ところでさ、この中のまとめ役さんに質問します。

 この”試練”の終わりってどこなんでしょうね? 私が初めにこのテセウスに来た時刻は実は覚えてないですしあなたがたも分からないですよね。ですから、一日がどこから始まるかが大切なんですよね。あなたがたが考える『一日のはじまり』っていつですか?

 時間的に考えれば午前0時がその一日の始まりであると言えますが、午前0時が注目されるのはほとんどの場合、正月ですから終わりとして相応しくないんですよねー。だったら朝を迎えた時間をその一日の始まりとします? それだとこの季節から考えてこの街の終わる時間まであと7日と……」



「うるさい!」



 と、待ちきれなかった喧嘩っ早い感じの男性がレイピアを持って、アイスバーンさんへと突っ込んで来た。それをアイスバーンさんは一瞥(いちべつ)し、



「……そう言うのは早死にしますよ?」



 と言いつつ、彼女は拳をその男性に構える。



「ま、不味い! レックス、その拳には触れるな!」



「もう遅いですよ」



 リーダーらしい女性の制止の声をその男性、レックスが聞くまでにアイスバーンさんはその男性に触れる。そして男性は彼女の手に触れられて、そのまま無言で倒れる。



「レックス―――――!」



「安心してくださいな、峰打ちです。レックスさんとやらはまだ生きてますよ? それに私の能力が即死系の類では無い事は、あなたがたはご存じのはずでしょう?」



 とアイスバーンさんは言いつつ、そのレックスとやらの身体を両腕で抱きかかえて、顔を相手に見せる。そこには目を回した男性の顔があった。



「この人に今度からはもう少し策を練って戦うよう、ご指導とご鞭撻(べんたつ)をしておいた方が良いですね。これは私からの忠告です」



 そう冷静に言う彼女の頬を、何かが通り抜けて彼女の頬に筋の傷を付ける。それが銃弾である事を、彼女は経験と目の前の銃が地面に見える後から理解した。そしてはぁー、と溜め息を吐く。



「この状態で攻撃をするとか……。切羽詰まり過ぎ、そして機会をもう少し伺うべきです。あまつさえ、こんな状態で銃弾を外すとか、あなたに銃は向いていませんよ」



 そう言いつつ、地面に埋め込まれた銃弾を取り出したアイスバーンさんは、銃弾を持ってその銃弾が放たれた方向に向けて銃弾を放つ。放たれた銃弾は真っ直ぐに飛んで行って、木の上に居た冒険者が倒れる。



「無事、命中しましたか。まぁ、こんなに簡単に当てられるとは、やっぱり君に銃は向いてないよ。銃の暗殺者が殺される対象に銃弾を当てられてては世話が無い」



「貴様―――――!」



 そう言いつつ、武器を持った何十人もの冒険者がアイスバーンさんに向かって行く。



「この世で一番隙が多いのは、激昂(げきこう)した状態だよ。そして君達は弱すぎる」



 腰から『風』の魔力を溜めた魔法石と呼ばれる石を取り出したアイスバーンさんは、それを地面に投げて叩き割る。叩き割ると共に現れた竜巻が、アイスバーンさんを囲んでいた冒険者達を吹き飛ばしていた。



「あぁ……容易いなぁ」



 アイスバーンさんはそう言って、「もう少し考えて攻撃しよう。そうしないと、君達に試練はクリア出来ない」と言ってある茂みを睨み付ける。



「後、殺気も抑えないといけないね。リーダーだとしても、真面(まとも)真正面(ましょうめん)で戦って、君達は勝てないと理解しているはずだよ」



 と言うと共に、茂みの中で隠れていたリーダーが現れる。20歳くらいの若い、切れ長の瞳が特徴的な女性だ。その身体には薄緑色の甲冑を纏っており、その手には金色の星の形の手裏剣のような物を持っている。



「……やはり私達では勝てませんか。では、あの宿に泊まっている彼らならばどうでしょうか?」



「それはルール違反だよ。最初にそう取り決めたはずだよ。それをした場合は、色々と不味い事になるよ。だから、君達はルールに乗っ取って、良い試練ライフを送ってくれ。では、御機嫌よう」



 そう言って、古くなって壊される予定のビルと新しく作られる予定のお店の間を通ってどこかに行ってしまうアイスバーンさんを見て、リーダーの女性は唇を強く噛みしめていた。

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