宿屋で対策
増設港町テセウスにある宿屋、『鳩の時計』。名の通り、大きな鳩時計があるから、『鳩の時計』と言う名前かと思いきや、初代の宿屋の主人の名前が、トケイ・ハトさんだったからこの名前が付いたと言う聞いて意外だなーと思ったこの宿に、僕達は居た。
【多次元相撲の試練】。只今、一戦一敗。あと一週間、7日の間に残り四戦の間に一勝しないと、僕達は負けらしい。
部屋に入った僕達は【多次元相撲の試練】、アイスバーンさんの対策を考えていく。
「あの人の足の裏以外を地面に当てる……。1対1ですので、連携技は出来ませんし」
と、紅葉は冷静的確に対策を考えている。思うんだけれども、紅葉って頭脳派だよね。いつも対策を考えたりしているし。
「じゃあ、近距離で一気に!」
「……それだと私の二の舞いですよ?」
と、姫の豪快な言葉に落ち込んだユリーが冷静にツッコミを入れる。ツッコミを入れた後、ユリーは溜め息を吐いて部屋の隅にうずくまる。余程、落ち込んでいるのだろうかそのまま動かない。
「『闇』で引き寄せて攻撃する、か。そしてそのまま地面に蹴り落としておけば……」
なんとかなる、だろうか? まぁ、他にも色々と考えられるのかも知れないが。
「他にも色々と策はある、か。これは個々の能力を見ると言うのが目的の試練なのだろうか?」
「そ、そうなのでしょうか? あの神様は何を考えているのか分からないですし。こ、これにも何か裏があるのでしょうか?」
と、月裏さんは日向ラファエルが裏で何か思惑があるんじゃないかと、考え込んでいる。
「この試練のルール。それから終わる日付。対戦者人数。何か、裏をかいて仕込みを入れてるんじゃないかと。この試練、少々楽すぎるのです」
月裏さんはハッキリとそう言いきった。
「楽すぎる?」
「は、はい。だ、だって、この試練。簡単に終えられるじゃないですか、朝比奈さん、もしくは紅葉さんであれば」
月裏さんは僕と紅葉の2人を指差してそう言う。僕達2人? 2人だったら簡単に終えられる?
「ひ、姫ちゃんだってそうですし。ユリーさんも、そして私だって勝つ事は2人ほどではありませんが、勝てる、と思いますよ?」
今度は姫と、落ち込んでいるユリーを指差す月裏さん。
「勝てる、とはどう言った事でしょうか? 月裏さん?」
と聞く紅葉。
「は、はい。た、多分相手も承知していると思いますけれども、武器で地面を放り投げて相手に当てればそれで勝ちなんじゃないですか?」
「「「「……!」」」」
月裏さんの言葉になるほどと思う僕達。確かにルール上は地面を放り投げてはいけないと言うルールはない。あるのは、足の裏以外が地面に着く事で敗北とみなすと言う事だけ。
「あ、朝比奈さんと紅葉さんは地面を魔法で操れますし、ひ、姫ちゃんだって炎の魔法である程度は操れますよね?」
「うん! 皆ほどじゃないけど、魔力を込めればいける!」
地面を火炎で囲むようにして動かす技ならば、それも出来るでしょうと言い放つ姫。
「……で、でも私はそう言う事は」
「ゆ、ユリーさん。そんな怖い顔で見つめないでくださいよー」
と怖い顔で迫っていたユリーに怯える月裏さん。冷静になったユリーは一度咳払いをした後、後ろにさがる。
「……続きを」
「は、はい。私とユリーさんは氷の能力を使えます。ですので、ユリーさんは長刀・アイスバーグで、私は飛翔にて海面を凍らせてそれを操れば……」
「……海面も敗北条件。私の長刀は私の身体にカウントされないし、それなら問題はない、ですね」
「はい」
と言う訳で、僕達の条件の方はクリアとなった。さらに僕、紅葉、姫、月裏さんは身体から薄い魔力を自分に張れば、地面にはぶつからないと敗北を阻止する条件を出した。その事でユリーがさらに落ち込むんだけれども、それはひとまず置いといて、
「問題はあの日向ラファエルが私でさえも、こうやって対抗策を考え付くような試練をどうしてこんな序盤じゃない、この場所で出して来たのか。と言う事です」
と、月裏さんが悩んでいる事を言い、僕達もそうだなと頷き、再び考えを巡らせていくのであった。
【多次元相撲の試練】
足の裏以外の身体の部分が地面、もしくは海面に着いたら負け。と言う事は、それを動かせる者が居れば容易くこの試練はクリアできるはず。しかし、そんなすぐに対抗策が思いつくような試練をどうして今、日向ラファエルは出して来たのだろうか?