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おつかいの月裏オボロは正常です

 【ライバルの神】であるわたくし、月裏(つきうら)オボロは自分の事をバグっていると客観的に評価出来る神様である。



 狂っている。そしてどうして自分が狂ってしまったかと言う事も、わたくしは理解出来ていました。



 わたくし、月裏オボロは一度、大量の血を失う事件に遭いました。

 それを起こしたのは【試練の神様】である日向(ひなた)ラファエルを恨んで、反逆と共に天上界に乗り込んできた、哀れで、ちっぽけな人間でした。そんな人間はどこにも神を圧倒出来るほど秀でた所はなかったが、それでも神界に到達出来る人間だったから、神を殺せるほどの力を持ち合わせていたのです。神殺しの刀、今となっては正式な能力や名称はもう覚えていませんが、要するに神を殺せるほどの能力を持ち合わせていたのです。それによって、わたくしは斬られて、血を失った。その結果、生死の境をさまよっていたわたくしでしたが、その問題を解決するために【治療の神様】によって輸血行為が行われました。本来、神様は輸血なんて事は行いません。そもそもそんな状態を想定する方が難しいほど、わたくし達神々は血液を失うと言う行為から縁遠い存在でしたから。わたくしが大量の血を失う事件も過去数千年の間に1度起きたか、起きないかと言う頻度の事でした。ですから、輸血元の血がなかなか見つかりませんでした。その時、1人の神様が血を提供してくれたのです。その輸血元の血の持ち主が……



(あの豆羽の端末、豆羽(ずう)ワビサビ)



 その頃の豆羽達は何も問題が無い、ただの有能な神様でした。けれども、世にも珍しい神様同士の輸血行為に何も問題が無かったと言う事はありませんでした。それが【バグ】。

 わたくしが親元で、後に豆羽達全員に広がる悪。



(あれ以降、豆羽達に所々欠陥が生まれるようになってしまった。それは多分、わたくしと輸血してしまったせい)



 ただでさえ輸血行為と言う普通の神様にしたら危険な行為をしてしまっているのです。それが普通の神様では無く、【因豆羽分解(いんずうぶんかい)】と言う行為で16人に増やしている神様。そんな行為から自分はバグを発生し、豆羽達にバグが広がる事になったのだろうと、わたくしは理解していました。



「だが、それが何だと言うのですか?」



 と、わたくしはそう思いながら、自問自答を繰り返す。



 怪我をして、血を流したわたくしが悪い?

 ――――――――いや、怪我を受けた者は全員罪人だったりするのだろうか? そんな事はない。ならば、わたくしは悪くない。

 じゃあ、輸血をした【治療の神様】が悪い?

 ――――――――いや、【治療の神様】はわたくしを助けるために頑張って最善を尽くした。ならば、【治療の神様】は悪くない。

 じゃあ、輸血元の豆羽ワビサビが悪い?

 ――――――――いや、ワビサビさんはわたくしを助けるために血液を分けてくれたのだ。ならば、悪い事はしていない。

 じゃあ、怪我の原因を作ってしまった日向ラファエルとそれを倒しに来た人間が悪い?

 ――――――――いや、日向ラファエルさんは仕事をしていただけだし、それを倒しに来た人間も死力を尽くしていた。わたくしに恨む気持ちがないから、彼らも悪いとは言えない。



 誰も悪くない。



 このままのままで良いのだ。例え、この先何人も人が、神が、魔物が傷つこうが、世界が壊れようが何でも良い。



 誰も悪くないのだから。



「そ、それで!? コウ君の私に隠しておきたい秘密っていったいなんなの!?」



 そうやって、わたくしに聞く彼女、恋する乙女と化してしまったデスサイズさんにわたくしはニコリと微笑む。



「その前に、わたくしのお願いを聞いてください。今からわたくしの加護を受けた人間、ユウト・フランベル君をさらに強大な存在とするのです。そうしないといけない事情があるのです。

 そのためにはあなたの協力が必要なのですよ、デスサイズさん。それが終わったら、あなたの聞きたい事についてお答えいたします」



 わたくしは狂っているが、断じて悪くはないのだから。



 これもきっと、悪くはない。

 Episode.7、当て馬姉弟編終了。

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