早乙女フルートと天見アバユリの攻防戦
「で・す・か・ら、そんな男女の分かりやすいのは要らないの、デス! やっぱり禁断の恋だからこそ、燃えて萌えるのであって、男女じゃなくて女同士でないと燃えて萌えて来ない、デス! ですので、この早乙女フルートに天見アバユリと天見ミランダの絵を! ぼぅくに、禁断の絵を!」
「いや、そんな事を言われても仕方がないんだけれども……」
と言って、天見アバユリは彼女の申し出を断った。はぁはぁ言いながらそう頼んでくる少女の名前は、芸術の神、早乙女フルート。小柄な愛くるしい、白い肌が特徴の彼女は、ほのかに赤味がかかった肩よりも長い髪を流しており、桜色の瞳が特徴である。頭には髪と同じ色の猫耳、尾には金色の狐の尻尾が生えており、足は茶色い狸の足になっている。そして虎模様の服を着た彼女は、背中にニワトリの翼が生えている。そんないくつもの動物が融合したような彼女は、はぁはぁと言って筆ペンと白い漫画用紙を持って、天見アバユリに迫っている。
「おいおい、こんな事をしてるのがもし当人に知られたら、どうなるんだ?」
「その場合は天見ミランダ×早乙女フルートと言う、シチュに興奮するだけ、デス! ぼぅくと言う百合女神は!」
フフッ……と言って、早乙女フルートは恍惚の笑みを浮かべる。その口からは涎がこぼれている。
芸術には様々なジャンルが存在する。言語美術、造形美術、音響芸術、総合芸術など多岐に渡る。そんな中、早乙女フルートは言語芸術の中でも文芸誌、特に禁断の女性同士のカップリングを中心にして描いている神様だ。そんな彼女がはぁはぁ言いながら、近寄る姿は見ていて良い物ではなかった。
「男女のカップリングでは興奮しませんから、出来るならば女装してくれると助かります、デス! そうすれば、ぼぅくは最高の作品を!」
「……お前、もしかして豆羽達と同じようにバグでもなっているんじゃないですか?」
「いえ、ぼぅくは豆羽とは関係ないから大丈夫、デスよ? ぼぅくはただただ、女同士の、健全ではない禁断の絵を描いて、燃えて萌えたいだけ、デス!」
それが可笑しいんだよと言いながら、天見アバユリは声を出していた。
「天見アバユリ君、お願いする、デス。ぼぅくはただ、そう言った作品を作りたいだけなん、デス! 皆に見て貰えたらそれは嬉しいけれども、決してぼぅくはそこまで金にはこだわってはいない、デス!
金や名声、そう言ったくだらない物はぼぅくは欲しくない、デス! ぼぅくはそう言った、くだらない物には関わらずに、ただただぼぅくの好きな物を描いておきたいだけ、デス!」
フルートはそう言いながら、
「さぁ、早くこのコスプレに着替えて、ぼぅくにその美しいミランダ×アバユリでも、アバユリ×ミランダのどちらも描けて、おまけに義理の兄妹と言う最高の要素を手に入れているその作品を完成させてくださいな、デス!」
と、はぁはぁしながら言う。
アバユリは断る事も出来たが、彼女があまりにもしつこくてこのままだとミランダの方に被害が及ぶと考えて、仕方なくそのコスプレ衣装に手を取って、着ている服を脱ぎ始める。
「来た、来た、来た、デス! キマシタワー! 今、ここに! 新ジャンル、『女装版天見アバユリ×天見ミランダ』、『天見ミランダ×女装版天見ミランダ』と言う新二大ジャンルがー!」
「……何をしてます」
そんな場所に、当人である天見ミランダが大好きな兄の所へと登場し、興奮している早乙女フルートと、女装姿の兄の天見アバユリを見つけるのはその5分後の事だった。
早乙女フルートの名前が出たのは、第16部。只今は第155部ですので、139部分引っ張って来たネタと言う事に……。