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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
はずれ勇者の外道美学
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世界のルール

「いやー、まさかこんなにあっさりと倒されるとは思ってなかったよ。いや、弱弱しい事も【寿司】の1つなんでしょうか? わたくしとしては、弱い者も【寿司】ですし」



 そう言いながら、「ハハハ」と笑う月裏オボロ。



「喜んで下さい、あなたは今から勇者になったのですよ。魔王を倒すために、人々から【寿司】だと思われるような行動で、民衆に【寿司】だと思われてくださいな。それがあなたの役割なのだから」



「……どう言う事だ」



 と、僕は目の前に立つ神にそう尋ねる。



「そんなに怒らないでくれ、わたくしの【寿司】な人間。その人間の1人である朝比奈揺君。わたくしはそんな顔はあまり【寿司】ではないんですよ。

 説明してあげましょう。わたくし、月裏オボロは『ライバルの神』。神様の中でもかなり特殊な神様の1人です」



 「よろしくねー♡ 【寿司】な朝比奈揺君♡」と手を振りながら、笑顔を見せる月裏オボロさん。



「月裏って事は……ラキナエルさんの……」



「……ん? そうだよ? あぁ、ちゃんと彼女の名前は覚えていたんだね。いつも月裏さんと言っているから、てっきり彼女の名前を忘れているから苗字を言っているだけかと思っていたんだけれども。やっぱり【寿司】な者は忘れないか。良いね、それ。まぁ、彼女の親戚……みたいな物ですよ。

 わたくしは『ライバルの神』。世界に強大な、その世界の者では対応出来ないような巨大な悪が生まれた場合、その相手する存在の『ライバル』を作り出すと言う事です。

 邪神、災厄、それから魔王。それと対抗出来る存在を作り出すため、その『ライバル』を作り出す存在。それがわたくし、月裏オボロ」



「……敵対する存在を、敵対出来るくらい強くする【踏み台】を加護を与えて作るのか」



 その【踏み台】が……このユウトなのか。



「今回はその巨大な悪が魔王でしたから、今回は勇者になるための存在を強くするための【踏み台】を用意したんですよ。その【踏み台】を倒した者こそが、今回の勇者……。君は勇者として魔王を倒す存在なのです」



 ……いきなりそう言われても困るんだけれども。

 勇者? 【踏み台】? いきなりそう言われても……理解が追いつかない。



「理解出来ませんか? けれどもこれがルール。弱い者には弱い者としてのルールがあり、強い者には強い者としてのルールがある。君はユウトを倒した者として、そのルールに乗っ取って勇者となって魔王を倒さないといけないんですよ。それがルール」



「ルール……。僕が勇者となって魔王を倒さないといけない、それが世界のルール、なのか?」



「神とは世界を管理し、適正者を選抜する。それが神様。

 わたくしは適正者を選抜する為に、そう言った役割を持つ存在を用意した。そしてあなたはそれに勝った。それ故にわたくしは適正者として、あなたを選んだんです」



 シャラン、と彼女は錫杖を鳴らす。



「わたくしはあなたと戦いたいんじゃない。それを伝えに来ただけです」



「勇者として魔王を倒せ……と?」



「そうです。とりあえず魔王を倒すために、試練の神様である日向ラファエルさんと協力しながらあなたを強者へと育て上げ、魔王と戦う為の最高の舞台を用意する……まぁ、そんな感じですね」



 「それをするために、もう少しこのユウトにはもう少し頑張って貰いますけれどもね」と言って、彼女はユウトの肩を掴んで背中に背負う。



「おぉっ、なかなかの重み……【寿司】になりそうですね」



「彼をどうするんですか?」



「なーに。もっと効果的な場面で使うんですよ。もっと良い場面で。もっと良い形にて。しばらくの間、君と会えない事は君の事が【寿司】なわたくしにとっては、耐え難いけれども。それでも、それが後の大きな【寿司】に繋がるのならば今は耐えよう。

 ―――――――そして、君にわたくしは2つ予言する。

 1つは仲間についての予言、そしてもう1つは未来についての予言。さぁ、あなたはどっちの方を先に聞きますか?」



 と、彼女は錫杖を振るいながら、笑ってそう訪ねていた。未来についての予言は気になるが、今は仲間の事が聞きたい。



「じゃあ、まずは仲間についての予言から教えてください」



 僕はそう答える。その答えに彼女は「良いでしょう」と言う。



「仲間についての予言。もうすぐこの彼、豆羽ユウトの【因豆羽分解いんずうぶんかい】の効果は切れて、こちらにあなた達の仲間が帰って来る。多少、ダメージは負っていますが重傷者はいませんよ」



「……そうか」



 ある程度は予想していた事だが、まぁ嬉しい事だ。仲間が無事ならばそれがなにより。



「じゃあ、もう1つの―――――」



「おっと、それは出来ませんね」



 僕が言いかけようとした時、彼女はそう言って僕の言葉を止める。



「どうして? さっき、どっちも教えてくれるって……」



「そんな言葉は言ってませんよ? わたくしは『先にどちらを聞きたいですか?』と尋ねただけ。今、答えるとは言ってませんよ。先にお伝えしただけで、もう1つの方を今、教えるとは誰も語ってはいない」



「そんなのって……」



「今、あなたが勘違いしたように【2つの選択肢】と【『先にどちらが聞きたい?』と言う言葉】には見えざるルールがある。先に聞いた後、そのすぐ後にその答えを聞かせて貰えると言う、ルールがね。

 誰もが知らず知らずのうちに、そのルールに乗っ取られている。そしてそれが当然だと思っている。それがルール。

 ―――――あなたもこれと同じように、勇者にならざるを得ないんですよ。例え抵抗したって無駄です。……それがルールなのですから」



 そう言って、月裏オボロは豆羽ユウトと共に消え。



 僕には『勇者になる』と言うルールが押し付けられていた。

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