加護の効果
「くっ、一旦攻勢にしないとかつ可能性が無い!」
僕はそう思いつつ、『闇』の吸引を使ってユウトの身体を引き寄せる。彼の身体は物凄い勢いでこちらに引き寄せられてくる。
「……ッ!」
これには流石のユウトもすぐには対応が追い付かないようだ。驚きの表情と共にこちらに引き寄せられている。
「大剣、一刀両断斬り!」
僕は大剣・無銘を振るって、ユウトにぶつける。大剣にぶつかったユウトは致命傷を裂けるようにしてとっさに身体をよじったが、それでもそれでも攻撃は避ける事が出来ず、彼の身体には大きな傷が付けられて、そのまま吹っ飛ばされていた。
「ぐふっ……流石、大剣の破壊力はまともに喰らえば大ダメージだな。【ユウト】も油断してたよ」
(……可笑しい。そもそもこれだけの破壊力を生むと、頭で想像してないんだけれども。一旦、外れたと思っていたんだけれども)
僕が大剣を振るった時、僕の攻撃は完全に外れていた。その後、僕は何とか当たれと思って振るってみた所、攻撃した大剣が思いのほか伸びてユウトに当たっていた。簡単に言うと空振りしたと思って振るってみたら、ジャストミートしてホームランになった時の感じである。
(これはもしや大剣の戦女神であるルルリエルの加護で、大剣を振るう技能が高くなっていると言う事か?)
今まではそこまで強く実感は出来なかったが、ここに来てルルリエルさんの加護が出て来ている? いや、違うな。
(前までは漠然としか加護の事を考えていなかったが、この前その加護を実際に大きな形で見せつけていた1人の男を、1人の成功例を見たからな)
誰あろう、その人物こそ『教会騎士団』の筆頭であるイスルギさん。彼は雷の神様の加護を実際に戦闘に強い形で流用しており、あの事件以降僕なりに加護の事を詳しく考えるきっかけになった。今までは『成長の手助け』になれば良いやと思っていた物を、『戦闘に流用出来ないか』と言う事を考えていたしな。
それがこのような形で、生かされて来ているのだろうか?
(考え方、信じ方――――――この場合は信仰心によって神様の加護の形が変わってきていると言う事だろうか?)
まぁ、この場合は仕方ないか。
僕はそう思いつつ、『闇』の吸引でユウトの身体をさらに引き寄せる。そしてもう一度、大剣にて斬りかかる。
「……二度も行くか!」
ユウトはそう言って、その勢いのまま黒いレイピアで突っ込んでくる。大剣と黒いレイピア、攻撃範囲にはこちらの方が利があるし、それにユウトはこちらの魔法に乗って突っ込んでくると言うある意味足場がない状態だが、こっちは地に足ついてしっかりと踏み込んでいる。どちらにしてもこちらの方が有利なのは間違いない。
「大剣、大範囲斬り!」
僕はそのまま、大きく振るってユウトにぶつける。それに対してユウトも黒いレイピアにて攻撃を行うが、僕が瞬時に身を構えた事によって直撃は出来なかった。それでも僕は彼のレイピアを左肩に受けてしまったのだけれども。幸いかすり傷であって、ユウトがもろに喰らってしまった僕の大剣の攻撃と比べれば、マシな範囲に入るのだけれども。
ユウトは大剣によって強烈な攻撃を受けてしまって、そのまま先程のように吹っ飛んでしまっていた。
「……! 我流十六夜流、三日月突き!」
ユウトはそう言って、三日月を形作るように衝撃波を作り出してその攻撃を放っていた。またしても途中で攻撃を変えるのだろう。けれども、今の僕は大剣をいつも以上に使いこなせている。
「……大剣、居合斬り・斬!」
僕はユウトの『三日月斬り』を真正面から斬る。我流十六夜流は、後々から攻撃を変形させると言う攻撃だが、これは元の攻撃を変形する前にやると言う形であればその効果は無くなる。つまり、先に我流十六夜流の初撃を防げば、この我流十六夜流の長所は無くなってしまう。それこそこの我流十六夜流の弱点だ。
そしてユウトは斬られ、そのまま倒された。こうして僕は豆羽ユウトを倒す事に成功した。これも全て加護をくれた戦恋ルルリエルのおかげである。僕は心の中で、あの女神様に感謝の意を表するのであった。