我流剣術と豆羽の魔法
「我流二剣流、ダークヒーロー・ショックウエーブ!」
ユウトは両腕に持った2本の黒いレイピアを、背中の後ろに構えてそのまま地面に這うようにして衝撃波の波を放っていた。その衝撃波は黒く染まっていて、地面をえぐるようにして僕の方に向かっていた。
「聖剣の衝撃波!」
僕はそれを防ぐために同じように衝撃波を放って、その黒い衝撃波にぶつける。僕の放った衝撃波は、ユウトの黒い衝撃波にぶつかって消滅したが、ユウトの黒い衝撃波はあまり小さくなっていなかった。
「ちっ……!」
僕は土の魔法で地面を隆起させて、その黒い衝撃波を防いでいた。
「……長刀縛り!」
ユリーが長刀・アイスバーグの紐で縛り上げて、長刀・アイスバーグに魔力を纏わせてユウトを凍らせる。そして長刀・ボルケーノに火炎を纏わせてユウトを貫いていた。
「……これで倒せましたか」
と、ユリーはそう言って長刀を戻し、そのまま離れる。僕も警戒を解きながら増設港街テセウスへと向かう事にしていた。
(しかし、明らかに拍子抜けと言うか、全然相手にならなかったな……)
「―――――――――我流二剣流……」
「なっ……!」
僕は慌てて振り向くと、そこには空中に浮かぶユウトの腕があった。そのユウトの腕には先程も持っていた黒いレイピアが敵を仕留めようと僕の首を狙っていた。
「火炎札!」
しかし、そのユウトの腕を黒いレイピアごと紅葉が燃やしていた。
「なんですか、これは……。可笑しいですよ……」
紅葉がそう言いながら、水の塊を作り出してターゲットに狙いを定めている。
そこには16のユウトの部品が浮かんでいた。
ユウトの、頭。右腕。左腕。右足。左足。胸。腰。尻。髪。右目。左目。右耳。左耳。首。そして2枚の黒い翼。まるで糸が吊るされているかと思うくらい、ユウトと言う部品達は空中に浮かんでいた。
「……なに、これ?」
「驚いたか、アサヒナ・ユラギ? これこそ【豆羽ユウト】が真骨頂、【因豆羽分解】と言う魔法だよ。全身を16の分解に分けて、自由自在に操るこの魔法で、君をぶち殺そう」
そう言って、ユウトの身体は僕達にターゲットを合わせる。そして発射される。
「拙い……! 水のバリア!」
紅葉は慌てて水の塊をバリアの形に変えて、その部品攻撃を防いでいた。
「多くの攻撃を防いできましたが、まさかこんな身体を部品に変えて攻撃すると言う謎の攻撃方法を防ぐのは初めてですよ」
紅葉はそう言って、水に魔力を加えてユウトの部品を押し出す。
ユウトの部品達は弾かれ、そのまま空中で合体して地面に降りる。
「なかなかどうして、1対多人数はきついな。こっちは1を16に割っただけだしな。だが、しかし……この魔法こそ【ユウト】の我流二剣流を最強の二剣流にするために必要な魔法なのだ。
見せてやろう。これは姉ちゃんを倒す際に使った手だ」
姉ちゃんを倒す際に使った?
どう言う事だ?
倒された僕に恨みを持って襲って来るのならばまだしも、どうして姉を倒すだなんて……。
「――――――我流二剣流。いや、我流十六夜流をお見せする時間だ!」