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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
はずれ勇者の外道美学
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復讐の勇者、豆羽ユウト

「君は……勇者ユウト。どうしてこんな場所に……」



「カカカ! 勇者、勇者ね!? 確かに【ユウト】はお前には勇者として伝えたはずだな。【ユウト】的にはそれは間違っていなかった……あの頃は確かにそうだった」



 なんだ……? これは本当にあの時、戦っていた勇者であるユウト・フランベルなのだろうか?

 一人称がボクではなくて自分の名前になっていると言う事よりも、身に纏っている雰囲気が明らかにあの時のユウトではない。これは一体どう言う事なのだろうか?



「今の【ユウト】は過去の【ユウト】とは一線を画しているのだよ。なにせ、今の【ユウト】は能力も……そして覚悟も違うのだから」



 そう言いながら、ユウトは黒いレイピアを構える。



「君は二剣流としては一流の類に入る。そして圧倒的な攻撃力で【ユウト】を魅了していた。それ故に【ユウト】は二剣流をやっていた。しかし、やっぱりただ良いからと言うだけでやっただけの、【ユウト】の二剣流はやっぱり二流だ。だから勝てなかった。

 しかし、【ユウト】は知ったのだ。二流ながらにして一流に匹敵する物の存在を、それこそが我流。つまりはアレンジして自分なりに使った技術。これこそが君と戦うための最期の手段である」



 そう言いながら、ユウトは両腕に黒いレイピアを持ったまま、その黒いレイピアをお互いにぶつけている。お互いにお互いをぶつけて、ユウトは不気味にほくそ笑んでいる。



「な、なんでしょう。あの笑みは……無駄に怖いです」



「纏っている雰囲気が前に戦った時よりも明らかに異質ですね。……前のが水だとしたら、今は闇。明らかに黒ずんでいますね」



 月裏さんと紅葉はユウトの雰囲気が変わった事に驚いていて、姫は前にユウトが自分を取ろうとした事に警戒している。



「さぁ、もう1度、今一度勝負して貰おうか。アサヒナ・ユラギ。

 今の【ユウト】ならば、例え君だろうとも……いや、前の戦いだって君と一対一ならば……」



「……それよりも」



 と、ユリーがユウトの言葉をさえぎる。キョロキョロと辺りを見渡しながら



「……あなたのお仲間であったお姉さんと『教会騎士団』の方々はどこに?」



 とユウトに尋ねる。



 確かにあの時は勇者である彼の仲間として『教会騎士団』、及びその筆頭であるイスルギが。そして彼の姉であるリリーベルさんが居たはず。イスルギさんはまだ怪我が治っていないだろうから来れないにしても、何人か『教会騎士団』の人をこちらに寄越す事は出来ただろうし、姉であるリリーベルさんも姿が見えない。



「……まさか隙をついて、姫ちゃんを強奪……と言う真似はしないでしょうね?」



 そう言いながら、姫を守るようにして前に立つユリー。



 そうか、ユウトと戦っている最中に隙を見て姫ちゃんをさらおうと……



「―――――それは違う。流石の教会連中もそこまであくどい事はしないさ」



 とユウトがそれを否定する。



「彼らがする事はもっと単純な事さ。

 信者達に神の祝福とか言って自分達の金で支払った食物を与えたり、それから時々教会の威信とかのために国にお布施を貰いに行ったりとか……人道からは外れているような行為はしないのだよ、彼らは。なにせ、教会は悪を許さない。

 悪人を捕らえるような事はしたとしても、悪人を殺すような事はしない。逮捕は正義的な行いだろうが、殺害は悪的な行為として見られるだろうからね。

 そして後ろから攻撃なんて卑怯な真似はしない。そんな事が出来る連中だとしたらこの前の対決の際に堂々と後ろから魔法なりなんなりを撃っていただろうよ」



 「それに教会は今は関係ないんだよ」とユウトは言う。



「アサヒナ・ユラギ。君は良い奴だ。周りに居る女の子達はそれなりに幸せそうにしているし、それなりに苦労らしき事もしている。

 ―――――だから君と戦うのは正直気が進まない」



「じゃあ、なんで戦うんだよ。お前は」



 と言う質問にユウトはレイピアを構えながらこう答える。



「君と戦う。それが豆羽ブレイド様のご加護を受け、その任務を承った新生ユウト・フランベル、いや【豆羽ユウト】の使命なんだよ」



 その瞳は黒く、そして濁った、バグったような目をしていた。

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