姫と支度の時間
これ以上居ても、勇者達の邪魔になると思った僕達は次の街に向かう事を『教会騎士団』に打診した。そして皆で準備を始める。僕は姫と一緒になって準備を始めていた。
紅葉が「今回くらいは姫ちゃんと朝比奈さんと一緒の方が良いと思いますよ?」と言い、ユリーも「……そうですね」と返答していた。月裏さんはあの勇者ユウトに加護を与えた『勇者の神様』と言う存在が気になっているらしく、今は神様の世界にある月裏ラキナエルさんの身体と情報を共有しているみたいである。
「ふん、ふふふーん!」
と、姫は大喜びなご様子で荷造りを始めている。
これから行く街は、増設港街テセウス。次々と新しい船を増設しながら、新しい塔や建物を増築しきっているとされている街。常に大工達や棟梁達などが、新しい技術を試しながら新しい建物を作りつつ、要らなくなった建物や船を処分していく。それが増設港街テセウスである。
しかし本当に行きたいのはその港からの船に乗って行ける、シチュユリ。近くにモンスターが居るけれどもとりわけ強いと言う事でもなくて、とりわけ治安が悪いと言う事もない街、別名を『平凡街』。とりわけ稼ぎたくも、とりわけ冒険をしたくない人だったら、平和に、過ごせる街である。
別に定住したい訳ではないけれども、一旦は姫の事があるので落ち着いた方が良いと思ったので、この田舎のような平凡な街、シチュユリにて平和に過ごそうと思った。その街には『鋼の城』のギルドの支部があるらしくて冒険者としての仕事も出来るだろうし。
(まぁ、冒険をするにしても。クエストをするにしても。一旦はここで休憩するか)
「楽しみ~。楽しみ~」
そう言いながら、姫は荷造りをしている。着て行く服や、旅に出た時に食べるための食糧を入れていく。それを横目で見ながら、僕も行くためのキャンプ道具を用意していく。
「そんなに楽しみなのか、シチュユリが?」
「……? シチュユリではなく、テセウスでしょ? 行くのは、さ」
そうであるだろうけれども、テセウスはただの通過点にしか過ぎない街である。そこを楽しみにされても困るのだけれども。
「テセウスからは船から、沢山の街に行けるんでしょ? だったら―――――皆で楽しめるような所にも行けるんでしょ? それだったら今より楽しい街にも行けるかも知れないじゃないですか。
そ・れ・に――――――」
そう言いながら、僕に寄りかかる姫。
「―――――私のために、勇者であるユウトと戦った、ゆらぎんはカッコ良かったよ」
ニコリと笑いながら姫は「フフフ……ありがとうね、ゆらぎん」と言っていた。
【朝比奈揺 Lv.25 種族;人間 職業;神殺しの二剣流 HP;490/640 MP;120/480 加護;ルルリエルの加護
姫 Lv.23 種族;獣人(狸族と狐族のハーフ) 職業;禁呪術師 HP;385/440 MP;400/740
△スキル【者の尻尾】を手に入れました
紅葉 Lv.23 種族;リッチ 職業;希望の魔法使い HP;48/130 MP;4200/7400
ユリエル・アトラシ Lv.23 種族;人間 職業;二刀流 HP;320/470 MP;180/250
月裏 Lv.19 種族;不死鳥 職業;拳士 Hp;120/240 MP;240/680】
「―――――さぁ、勇者ユウトよ。英雄は絶望から這い上がってこそ、皆に”寿司”になれる存在となるんだよ?
そんな君のために、わたくしは君を強くするための、手助けになる神様を用意したよ」
「そうだね、【ブレイド】的に言うとこうかな?
『-――――――おぉ、勇者よ。こんな所で倒れるなんて情けない』かな? そうかな、そう思うよな?」
勇者としての意味を失っていた彼の前に、2人の神様が優しく囁いた。