勇者、ボロクソに言われる
「――――そもそもこの勝負は、私、リリーベル・フランベルがあなた達に挑んだ勝負ではなく、私の弟である勇者、ユウト・フランベルがあなた達に挑んだ対決です。そんな戦いで私が善戦して奇しくも勝利をしても、果たして勇者の栄光とやらは付くでしょうか?」
宿屋に帰ったリリーベル・フランベルは椅子に座ったまま、お茶を飲んだままそう言って来る。ちなみに彼女の弟であるユウト・フランベルはあの岩の中から『教会騎士団』によって救助されたイスルギと一緒に、教会で看護を受けているらしい。
ちなみにユリーは教会の方からきちんとした説明があるらしい。王族と戦っていないとは言っても、ユリーの家族の王家の人達に色々と話す事があるのだとか。
「そう言う物、なんですか? かなり強かった気がしますが……」
と、僕が言っておくと
「いえ、そろそろ魔力切れを起こしそうでしたもの。あれ以上やっていたら負けていた気がします。だから、これで良かったんですよ。うちの弟もあのままでは多分、勇者としてダメな方向に進んでいたと思いますし。二剣流ってあなたの技だったんですね」
と納得したように頷くリリーベルさん。
「『あなたの技』ってどう言う意味ですか?」
「紅葉さんの質問に答えるとしましたら、あのユウトは昔から要領の良いだけの子供でした」
紅葉の質問に対して、そう答えているリリーベルさん。
「要領?」
「よ、要領って、ど、どう言う意味でしょうか?」
姫と月裏さんの2人は、リリーベルさんにその質問を返すのにイスルギの名前を出す。
「イスルギさんは雷を纏わせる剣を使ってたじゃないですか。あれは魔力ではなくて、彼の雷の神の加護を使って作っていたんですよ。だから、あの岩を壊せなかったんですよ。見る限り、あれを壊すのにそれなりの魔力を使わないといけないですし。
今回はこのような形で負けていましたが、本当だったら全身に雷を纏わせて肉体強化をしたり、相手の病の原因である病原菌を電気ショックで治したりと普通に筆頭らしい強さを持っているんですよ」
普通に強いんだな、イスルギさん。まぁ、筆頭であの弱さはないと思っていたが、本当に強かったんだな。
「対してユウトは昔から始まりを掴むのは良いんですよ。見ただけでだいたい、自分の手で使えるようにやっています。けれども、だとしても、二流で終わってしまいます。
つまりは、何かを掴むのは速いんですけれども、それを一流には出来ません人と言う事です」
ちゃんと出来るけれども、それを一流には出来ない人間がユウトですか。確かにあの二剣流は「二流二剣流」と言っていた気がしますし。
「まぁ、姫ちゃんを貰えなかったのは残念でしたが、これからユウトにはもっと強くなって貰うだろうし。イスルギさんもこれから強くなりますし。それに他の仲間ももっと増えて強くなるでしょうね」
「まぁ、今は手伝っていますけれども、そのうち私も居なくなるんですかね……」と言ってリリーベルさんは、「失礼します」と言って帰って行くのであった。