街外れの相対
教会から僕達に対して、通達が来た。
決闘する時間は、翌日の朝。場所は、ヒメハジメの街の街外れの森。
戦う人数は3人、それ以上の人数をした場合は教会の『教会騎士団』が全精力を持って僕達を倒すのだと言う。僕達がもしもあの時、すぐさま姫を渡さないと言った場合は、『教会騎士団』に闇討ちさせて姫を奪う予定だったと言う事だ。早急に決断を出さなくて良かった。
しかも戦う相手は姫、それにユリーの2人を除いた僕、紅葉、月裏さんの3人で戦えと命令してきた。お願いではなく、命令だった。そうじゃない場合は素直に闇討ちすると言って来た。なんで姫を外したかと言うと姫はその後魔王を倒すのに必要だから出来るなら怪我をさせたくないからだと。ユリーは国の姫だから倒しづらいだと。
(……教会なのに、どうして闇討ち、闇討ちを連呼するのだか。教会が聞いて呆れてしまう)
と言う訳で、戦うのは僕、紅葉、それから月裏さんの3人。構成からすると僕と月裏さんが前衛、もとい後衛である紅葉の盾となって紅葉の魔法を使うのを防ぐと言う構成だろうか。対する敵側は万全のようだ。それにあちらはこちらが逃げないように『教会騎士団』の連中で取り囲んで、しかも姫とユリーの側にはいかにもな実力者が待機している。
あちらの布陣は一番前に居るのと一番後ろに居るのは勇者と名乗っているユウト・フランベルと魔法使いであるリリーベル・フランベルの2人。そしてその後ろに居るのが恐らく……。
(彼らが言っていた『教会騎士団』の筆頭だろうな)
その背後にはガチガチの騎士団服に身を包んだ騎士が立っている。
白を主な色として使っており、全身が鎧になっており、暑そうな、そして隙がない騎士の甲冑を着こんでおり、体格はかなり高め。その手には見間違うかのような白く輝く聖剣を持っている。そしてその胸の真ん中には教会を象徴するかのごとき、十字架が描かれている。
すると、その騎士はいきなり大きな声で自己紹介を始める。
「音に聞いて、目にも見よ! 我が名は『教会騎士団』筆頭、雷の神のご加護を賜いし神の忠実なる僕であり、人間の平和を切に願う者! 名をイスルギと申す者なり!」
そう言って、聖剣を掲げる。
「今一度、相対する朝比奈殿達に問おう。我らが願うは、人間の平和! そのためならば例え彼女を奪うと言う人の世の理を外れる行為をしようとも、君を殺す事もいとわずに、ただただこの世界を破滅に導くとされる魔王を倒す者なり!
されども、我らには会話と言うコミュニケーションによって互いの意見を言い合い、聞き会う事が出来る。それ故に今一度自らの心に問いかけろ!
勇者の手助けになれるのならば、そこに居る彼女も本望であろう。しかし、そちらの方々はそれでは納得するまい! では、我の話を聞いて貰おう!
我にもまた愛すべき者が居た。妻だ。その者はこの世界を破滅に導く暗黒龍の生贄となり、死に至った。我は涙に震え、世界を呪った。しかし、妻は言ったのだ。
『その手で世界を守って』と。今は亡き妻の最期の遺言であるこの言葉を我は愚直に守り続けている! 故に貴様らがどう思おうと構わん! 彼女は世界を守るために必要なのだ! 分かってくれ、頼む! いくら我を恨んでも構わんが、その者が必要なのだ! 分かってくれ!」
そう言って、騎士は聖剣をしまって、そのまま流れるような動作で土下座をした。まるでそんな事などなんとも思っていない、必要だからこそした、それでも必死の思いが伝わる土下座。
さっきの宣言もそうだ。ただの自己紹介と思いきや、いつの間にか彼がどれだけ世界を救いたいと思っているのかがひしひしと伝わって来た。いつの間にか逃げないように取り囲んでいる騎士団連中が「イスルギ隊長~!」と全員が全員涙を流している。
(不味いな。完全にこちらが悪役だ)
もし、これでこちらが勝ちでもしたら全力でブーイングが来そうな、本当に状況的に雰囲気的に不利な状況だ。
「じゃあ、朝比奈さん。ボクにもう一度答えてくれ。
―――――姫ちゃんを譲ってくれ」
勇者であるユウトはそう言って、僕に頭を下げる。ここで断ったら僕達は彼らに大悪人でもされるのかと思いつつ、それでもなお僕は断固として
「―――――断る!」
と強く言い放つ。
周囲が明らかに敵意と殺意を持って、空気の読めない僕を睨み付けるが関係ない。僕は姫を渡さない。それを決めて、彼らに立ち向かうと決めたのだから。
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