ヒメハジメの街へと向かおう
「受付嬢を返していただき、ありがとうございます。しかし、そんなにすぐに出てよろしいのですか?」
「えぇ。どうもうちのメンバーが早く行きたい場所があると言う事なので」
と、ギルドの受付嬢さんに倒れていた受付さんとギルドカードを渡した僕はそう返事を返しておく。
「……はい、依頼、確かに完了した事がギルドの神によって判明いたしました。そして次の依頼、Dランクの依頼、『ヒメハジメの街への荷物運送』を確認いたしました。この依頼は、アイテム屋の主人から荷物をヒメハジメの街へと運ぶのが仕事です。荷物の中身は『古ぼけた刀剣』と『古ぼけた杖』の2つ。しかし、中身は見てはなりませんとの事です。
では、アイテム屋の主人から持って行く荷物の預託です」
そう言って、ギルドの受付さんは僕に2つの荷物を渡してくれる。風呂敷に包まれているけれども、剣のような形をした物と杖のような形をした物の2つである。
「これを届ければ良いんですね」
「そうです、その通り」
僕はそう言って、その2つの荷物を貰っておく。そして、ありがとうございますとだけ言ってギルドを後にした。
#
「と言う訳で、さっさとヒメハジメの街へ向かいましょうか。皆」
と僕が言うと、月裏さんが「少し待ってください」と言う。
「その2つの荷物ですが……『古ぼけた刀剣』と『古ぼけた杖』だったんですよね? それって、あのシルバーカシラウルフが持っていた物と同じじゃないですか?」
「そう……だよな」
『古ぼけた刀剣』や『古ぼけた杖』と言う事を聞くと、『古ぼけた王冠』を付けたあのボス、シルバーカシラウルフを思い出す。あいつは『古ぼけた王冠』を被っていたし。これもそう言った商品じゃないかと思ってしまうのも分かる。
「そう……ですね。もしかしたら、私達の誰かがあのシルバーカシラウルフになる可能性もありますね。朝比奈さんとユリエル姫以外は全員モンスターのような物ですから」
と、紅葉が言う。
姫は、狐と狸のハーフのタヌキツネ。
紅葉は、リッチ。
月裏さんは、不死鳥ですからね。
全員、モンスターとして考える事も出来て、シルバーカシラウルフにもなるかも知れないし。
「大丈夫、この『古ぼけた刀剣』と『古ぼけた杖』の2つは、僕とユリーが管理しておきますし」
「……そうね。この2つはもしもの時があった場合、困りますから」
そう言って、ユリーは風呂敷で包まれた杖のような物を受け取り、僕は風呂敷で包まれた剣のような物を持っておく。
「で、それはそれとして、馬車は……」
「紅葉、それは疲れすぎだよ……」
と言っておく。
これ以上、金を浪費するのはあまりいただけない。
「でも、必要だと思うんですが……」
「まぁ、月裏さんに持って行って貰えば良いのでは? そうすれば金はかからないですし」
「え、えっと、が、頑張って紅葉さんを連れて行きます!」
月裏さんはそう言って、ガッツポーズをする。そして紅葉さんに歩み寄る。
「わ、私が連れて行きますね……紅葉さん」
「月裏さんならば、安全です。頼みますよ」
2人はそう言って、お願いしますと言い合う。紅葉の体力の無さはこれでカバー出来るだろう。
「あっ! 私も! 私も!」
「ひ、姫ちゃん! さ、流石に2人はきついよー」
姫も載せて欲しいようだが、どうやら定員オーバーと言う事なのだろう。
「むー、じゃあ!」
「えっ?」
そう言って、姫は僕の背中に乗る。
「……これで歩けと?」
「うん! ぽっかぽかで、とっても良い!」
いや、姫としてはそれで良いのかも知れないけれども、僕、歩き辛いんですけれども。
まぁ、背中に当たる感触が良いので良かったんだけれども。
「……じゃあ、私も」
「ユリーはダメ――――――!?」
と、ユリーもやろうとしたのを、姫は本気で止めていた。
今週の金曜日(8月16日)から今週の日曜日(8月18日)までの3日間はこの『余り物には……福がある?』の連載はストップしておきます。理由はお盆でありますからお墓参りをするのと、次の作品のためのアイデア集め及び設定作りです。すいませんが、ご了承していただけるとありがたいです。