【閑話】日向ラファエルと親友
昔々、1人の神が居ました。彼の名前は宮本デューク。
彼は非常に優秀で、完璧を求める優等生だった。
どんな些細なミスも修正して削除する、完璧にして潔癖な神様だった。
そんな彼にも心から親友と、心の友と書いて心友と呼べるべき神様が居た。その者の名は日向ラファエル。
彼は非常に優秀だったが、宮本デュークとは違い、完璧を求める事はしなかった。
どんなに完璧な物でも必ずミスが存在する、そう言う事を考える完璧を否定する潔癖では無い神様だった。
彼らは考え方の違いで良く喧嘩をしていた。
大抵は日向ラファエルが無神経すぎるのと、宮本デュークが潔癖すぎるのが問題なのだが。
それでもそのすぐ後にはお互いにお互いの意見を聞き入れる事はしないが、それでも違う観点からの言葉として受け入れていた。
そんな彼らでも譲れない価値観があった。それは人間に対する価値観だ。
日向ラファエルの価値観は『人間は完璧では無い、故に誰かが試練を与える事によって、完璧に近づけるべきである』と言う考え方。
それに対する宮本デュークの価値観は『人間は完璧では無い、故に誰かが彼らを是正しなければならない』と言う考え方であった。
日向ラファエルは人間は自分達の手で成長出来ると思っている。その過程に試練と言う物が必要になって来るだろうが。
宮本デュークは人間は自分達の手では成長出来ないと思っている。その過程で第三者の介入と言う物が必要になって来ると。
2人はお互いにお互いの事を知り、認め合い、意見として受け入れて来たが、それだけはどうしても受け入れられなかった。
けれども、たった1つだけ。だから、2人はお互いに気にせずに仲良く過ごしていた。
そして神様の学校の卒業式。
宮本デュークは日向ラファエルを呼び出していた。
「日向、我はこれから完璧になるのだ! 人間を救うには、完璧な神様として導くべき指導者たる神が必要だ。我はそのために完璧な神となってみせるのだ!」
それは彼なりの人間を救うための手段だった。
「人間は今のままだとダメだ。だから、我は彼らを是正する。日向は彼らを試練によって救済するつもりなんだろう。それもまた手段の1つだ。だが、我はそれだと足りないと思っているのだ。
神様のエリート達によって形成されている医療関係のスペシャリストの話によると、神様の身体にある脳を弄る事によって神様の使える領域が増えるらしいのだ。神様の身体でやると言う人体実験ならぬ神体実験はまだらしいが、その栄えある実験例に我が選ばれたのだ。
この実験に成功すれば今以上に完璧な脳を持った神様である、我が誕生する。よって、我は今から実験を行う」
危険だ、と日向ラファエルは何度も止めた。しかし、宮本デュークの意思は固かった。
「大丈夫だ、日向ラファエル。もし我が失敗したら、我は分身体を作る予定だ。多分、失敗したら分身体にバグが発生してバグのせいで人間に迷惑をかけてしまうのだろう。だから、お前はバグが発生したら、我を殺してバグを消滅してくれよ」
「そんな事を出来るか、バカ!」と日向ラファエルは、宮本デュークの服を掴んで怒り口調で言う。
「……そう、お前はそれで良いんだ。それで良いんだ。
試練を扱いながら人に憎まれながら、他人のために怒れる神様。お前はそれで良いんだ。
じゃあ、そろそろ行くんだ。失礼するのだ。
我は出来るならば完全対で、お前と会いたいのだ」
それが日向ラファエルが、本物の【宮本デューク】を見た最後だった。
そして、その実験は失敗した。
宮本デュークと言う人格は死んだ。
そして宮本デュークは16の分身体を作り出していた。
バグが出た分身体は、宮本デュークが危惧したように人間に危害を加え始めた。日向ラファエルは宮本デュークの言葉を守って、バグが出た分身体を殺害した。最初は躊躇していた日向ラファエルだったが、段々と慣れ始めていた。
何回もやる事によって、日向ラファエルは慣れ始めていたが、どうにかして宮本デュークを助けたいと思っていた。
例えそれが1%の可能性もないにしても。
日向ラファエルはあの頃の宮本デュークとまた2人で、昔のようになりたいと思っていた。