希望の試練とゼツボウの端末達
「良く寝てるな……」
と、日向ラファエルはそう言ってミラキジェスの飼育小屋から、豆羽ミラキジェスを起こさないようにして部屋から出て行く。
「しかし、この程度で倒れてしまうとは……。軟弱な」
「違うわよね。そりゃあ、ミラキジェスじゃなかったとしても【わたくし】でも流石に夜通し語り明かしたら倒れると言う物よね。君のような徹夜に慣れている神様と一緒にしないで欲しいよね」
「【拙者】も至極同意するなり」
と、出て来た神様2人が日向ラファエルを止めていた。
【わたくし】と名乗る、金色の髪と蒼い瞳。青い浴衣と白い前掛けが特徴の少し太めの小柄な少女、【食卓の神の副神】である豆羽ワビサビ。
そしてもう1人は【拙者】と名乗っている、黒い髪と蜘蛛の巣のような模様の瞳。薄い黒色の和服を着た大柄な男性、鉄串にて人を殺す死神のササミ。
2人は日向ラファエルに、まるで長年来の友人のように話しかけていた。
「ワビサビとササミの……和装端末か。こんな所で何をしているんだ?」
「【わたくし】は食卓の神の主神様から朝食を作る命を受けてよね。【わたくし】は主神様と違って、どんな料理にも精通していると言う訳じゃないから得意料理である和食を作るつもりなのよね」
「【拙者】は宮本殿から頼まれて、殺害依頼をするなり。一緒に【最少殺しの死神】であるテセウス殿が、確かユリ……なんとか殿の殺害をお願いされていたなり」
と、豆羽ワビサビと、ササミの2人は返答する。
「【わたくし】も質問するよね! ラファエルはこれからどこに行くつもりなのよね?」
「【拙者】も質問するなり。最近噂のTPP問題につきまして、分かりやすく説明するなり」
「ワビサビの質問に対しては、普通にこれから1、2時間ほど自宅に帰って寝た後に、普通に仕事をするつもりだ。もう時間もないし。
……それからササミ、TPPは最近噂にはなってはない」
はぁー、と溜め息を吐く日向。
「ササミも駄目になって来たか。これは一度、やっておいた方が良いな」
「【拙者】からもお願いするなり」
「了解した、っと」
そう言って、ササミの身体に神殺しの日本刀を突き刺す。突き刺すと共に、ササミはそのまま血を流して倒れて行った。そして青ざめた顔になっていき、そして身体からは光が出る。光が出て行き、ササミの身体は消滅する。
「……流石に、16だとやっぱりきついな。最近、バグも増えて来て、この前もデバッグとして、バグに侵されていた豆羽エゴを殺したばかりだ。これは一度、どうにかしないといけないな」
「【わたくし】はただの通過儀礼であったと思うのよね。バグはいつか発生するものだし」
そう、ワビサビの言う通りであると日向は思っていた。
豆羽ワビサビや豆羽エゴの端末達は、そう言ったバグと言う物が生まれるのが当然と言った存在だからである。それを語ると長くなってしまうので、それを話す機会のはまたの機会にしよう。
「豆羽ワビサビ、最近は何か可笑しな事はあるか?」
「和食以外にも洋食にもレパートリーが増えて来たのよね。
あぁ、後、【芸術の神の副神】である豆羽クリエイトが何か良からぬ作品を作っていたのよね」
「……それは絶望的だな」
「あぁ、後は【ハルバードの戦女神】である豆羽ガッタイが近々戦乱を起こすために、魔王と手を組みたいらしいのよね」
と、豆羽ワビサビは普通に言う。
「……それもまた絶望的だな。
仕方ない、今度またその2人もまた殺してやるよ。それが私の役目だ」
「あぁ、それはありがたいのよね」
そう言って、ワビサビは何度も感謝の言葉を言って日向はもう良いよと言う。
「そうだよね。日向は我々端末達の【希望】なのよね」
「そうだ。お前ら、端末達は私の【ゼツボウ】なのだ」
と2人はお決まりの定型文を言うかのように言うのであった。