Future
僕達は受付嬢の女性を連れて、馬車に揺られて誕生都市ローレライへと帰っていた。馬車だが、勿論この洞窟の外に置いていたら盗まれる可能性が高かったので月裏さんに頼んで、誕生都市ローレライから持って来て貰ったんだけれども。ちなみに代金は月裏さんが代わりに払っていたので1200Gを支払った。当初の予定だと2000Gで済むかと思っていたんだけれども、2200G支払わなければならないといけなかったんだけれども。まぁ、そんなのは本当に些細な問題である。当初は2400Gかかるとされていたんだから、ほんの少し安くなったのを幸運と見るべきか。
(いや、初めからこの依頼は損をする事が分かっていたんだし。そしてそれをするようにこの受付嬢さんがやっていたんだし)
それが理由で、さっきの神様、【端末の神様】と名乗る豆羽エゴさんが殺そうとしたんだしな。
エゴ。自我とか言う意味を持つ英単語だが、16種類、いや本人が居るから17種類の自我があると言う皮肉めいた意味での名前だろうか? まぁ、彼、いや彼女なのだろうか。まぁ、豆羽エゴの事を考えても仕方がない。だったら考えない方が良いのだろう。
「それよりこの人、どうします? 何か目の前で殺されるのをユリエル姫が助けたと言う感じになってますが……」
「このまま連れて帰るしかないでしょう。本人がなにも言わないんだし、助けた恩人さんも」
そう、ユリーは馬車に乗ったきり、何も話していない。突っ走ったけれども、その分何も考えていなかったから言葉にしづらかったのだろうか? いや、そう言う単純な言葉で片付けられるような事でも無いんだろうけれども。
「じゃあ、いっその事このまま牢屋に一直線、とかは!?」
まるで良い事を思いついたような顔でこちらを見る姫。まぁ、それが一番普通だと思うんだけれども。
「そ、それが一番妥当ですね。それで行きますか?」
月裏さんも乗って来ているが、僕は頷き返せない。
ただ1人、この流れを作った受付嬢の彼女とユリーだけが黙り込んだままであり、それが無意味に怖かった。
そしてユリーは声を出す。彼女の考えを、彼女なりの考えを。
「……ユラギ。私は私なりの意見を言います。だからあなたは私の考えを全部聞き入れなくてくれなくても良いです。
……私は一旦城に戻って情報を集めるべきだと思います」
その頃、神の世界。
ギルドの神、天見アバユリの部屋。
「はぁはぁ……」
試練の神、日向ラファエルは息を切らしながら血の付いた日本刀を握りしめ。
「これで……参ったか。"エゴ"」
目の前に大量の血を流して横たわっている黒髪で黒いスーツを着た女性の姿をした端末の神、豆羽エゴに対して、
「死んだか……」
と言い放っていた。
Episode.6、最悪の序章編終了。