朝比奈、考察する
別に僕はモンスターに対してそこまでその境遇に同情していると言うつもりはないんだけれども、
(なんだか、ごめんな)
と、目の前の光景を見ながらそう思っていた。
目の前では紅葉が火炎の魔法で攻撃してそこから逃げたコボルト達を月裏さんがせん滅する。流石に圧巻されると言うべきだろう。とは言っても、後ろからもコボルト達が来るのでその相手をしないといけないんだけれども。その時、僕が使ったのは『闇』の魔法だ。
まぁ、幽霊じゃないから引力を使ってやっただけなんだが。そして『闇』で練習として彼らの中から魔力を引き出しているんだが、どうも魔力を抜いた事によって彼らの防御力が弱くなっている気がする。防御力でだけでなく、彼ら自身が弱くなっている気がするのだ。どうやらモンスターとは魔力によってその身体を強化しているのだろう。まぁ、コボルトは魔力も少なくて、多くの魔力は吸引出来ないんですけれども。
まぁ、今の僕の実力だったらこれくらいが丁度良いのだろう。あまり魔力が多すぎても扱いきれないし。
それにしても、
(奥へ奥へと向かってるな)
流石の2人もコボルト全部を殺すと言うのはやはり難しいらしく、何匹かのコボルトは洞窟の奥へと向かって行っている。そう、今回の任務の目的地でもある洞窟の奥へと。
「姫」
「ん? ゆらぎん、何?」
「コボルト達が奥へと向かっているのをどう思う?」
「分かんない! コボルトは何も考えてないと思う」
と、姫は自分の意見を述べる。確かに姫のような考えもあるだろう。
コボルトは武器は持てども、使う程の知能を持たないモンスター。ただひたすら奥へ奥へと向かって行っているだけなのかも知れない。
「ユリエル姫はどう思う?」
「……コボルトは必然的に自分のリーダーを求める性質があるから、奥に彼らのリーダーが居るのかも」
と言ったユリエル姫の意見もまたあっている。
コボルトは身体が大きければ大きいほど強く、知能も高くなり、群れの中でもそれなりの立場に立つ事が出来るらしい。実際、洞窟を進めば進むほどコボルトの身体つきは大きい者が目立ってくる。
(しかし、何か変なんだよな)
僕がそう思う理由、それは奥で増幅している負のエネルギーだ。
こんな場所でも感知できるほど大きい巨大な負のエネルギーが、どんどん巨大になっているのだ。つまりは奥でコボルト達が大量に死んでいると言う事。流石に知能が低いと言っても、自棄になって自分達の仲間を自分達で殺すと言うのはあまりにも可笑しい。
そして、負のエネルギーが一箇所に溜まっているのも可笑しいのだ。殺し合っているのならば、少なくとも何か所にばらけて死んでいるはずなのに、まるで殺された仲間を死体の山のように積んでいるかのようにどんどん高くなっている。
「どう言う事だ? 奥で何が起こっている?」
もしかして、これが封印されていたものの仕業だったりするのだろうか?
封印されていたものが、実は周りのコボルト達を殺すほど見境のないモンスターで、奥へと逃げて来たコボルト達を殺して食べているとか? いや、それだったら奥へと逃げずに、僕達なんかと戦わずに入口の方へと逃げるはずだ。
じゃあ、なんだ? 何が起こっている?
僕は警戒しつつ、奥へと進む。
目の前の紅葉と月裏さんの蹂躙している姿は、ちょっとあまりにも残酷すぎるので直視しないように気を付けながら。
【朝比奈揺 Lv.23 種族;人間 職業;神殺しの二剣流 HP;600/600 MP;440/440 加護;ルルリエルの加護
姫 Lv.22 種族;獣人(狸族と狐族のハーフ) 職業;禁呪術師 HP;420/420 MP;700/700
紅葉 Lv.22 種族;リッチ 職業;希望の魔法使い HP;128/128 MP;7200/7200
ユリエル・アトラシ Lv.22 種族;人間 職業;二刀流 HP;450/450 MP;240/240
月裏 Lv.17 種族;不死鳥 職業;拳士 Hp;200/200 MP;660/660】