コボルト達、恐怖する
モンスターの解説図鑑にこんな一節が載っている。
『最も弱いモンスターをスライムとすれば、その次に弱いモンスターは何であるかと言う質問に、私達はコボルトであると答えよう』。
コボルトは犬の頭部を持つ人間の子供くらいの大きさを持つモンスター。魔法に耐性はほとんどなく、特に火の魔法耐性が異常に低い。全体的な攻撃力や防御力と言った数値も高くないこのモンスターだが、このモンスターは武器を持つ事が出来る。短剣、杖、剣に長剣など、ダンジョンに落ちている元冒険者の持ち物を勝手に持って装備するのだ。ただし、犬の頭部を持つ彼らに武器を使うと言う行動は出来ず、端的に言えばただ武器を振り回していると言うだけにすぎない。
繁殖力が異常に高く、身体が大きいコボルトほど強くなっていく。
そんなコボルト達だが、2人の女性にこてんぱんにされていた。
「"火炎の嵐"」
1人の女性は魔法を使って、炎を纏った台風を作り出して攻撃する。台風とは言っても炎を纏っているから当たっただけで吹き飛ばされる前に燃え尽きる。
なんとかこの炎の台風を逃げ切った者達はもう1人の女性の魔の手が待っている。
「炎葬・炎飛翔!」
もう1人の女性は背中の炎を纏った翼を纏わせて、そのまま逃げ切ったコボルト達の方に飛翔するのだ。逃げようにもスタミナに余裕が無く、ましてや空を飛ぶ彼女に逃げる術は無い。そんなコボルト達は彼女の炎の翼の攻撃にやられてしまうのだ。
隠れていたコボルト達はそんな2人に恐怖し、後ろにさらに3人の人間が居る事に恐怖した。彼らもまた強い。
コボルト達は武器は使えないが、そんなにバカじゃない。洞窟に無数に開いた穴から何匹かのコボルト達の中でも優秀な人材達が後ろから攻撃しようとした。しかし、彼らもまた強い。
尻尾を生やした女性は火炎を使って燃やし、もう1人の女性は紐で縛り上げて剣で斬る。この人間達の中で唯一男性である彼と当たったコボルト達は、何故か引き寄せられてそのまま大剣で頭を真っ二つに斬られた。
ば、化け物だ。彼らは化け物だ。
コボルト達は恐怖する。何日かに一度、不定期にこう言った人間達がやって来てコボルト達を殺しに来る。大抵は数で押し切ればなんとか勝てるような人間が一人で、あるいはパーティーとかを組んでくるのだが、中にはこう言ったどうやっても勝てないような者達が現れる。数日前の全員が剣を持った奴らの時もそう思っていた。
そう言う時、コボルトは安全な方に逃げ込む。
彼らは知らず知らずのうち、自分達よりも強い仲間がいる方向、洞窟の奥へと向かって行く。
魔物達から見た視点と言うのを書いてみました。なかなか書きやすい。