馬車に乗って
馬車は絶対に必要だと主張する紅葉のあまりの剣幕に、僕達は賛成多数で馬車を借りる事にした。馬車の代金は1200Gだったのだが、馬車を管理している人物が僕が【幸せのサボテン】のスキルを持っていると言う事を話すと料金を1000Gに負けてくれた。最初は報酬を含めて1400Gの損失だったが、1000Gにしてくれたので、報酬を含めて1000Gの損失まで抑える事が出来た。とは言っても、まだ損をしたままだ。やはりこの任務は今のままではこちらが損をしたままの、任務だ。
このままだと損失は避けられない。ならば、【犬人の洞窟】でどうにかして損失を少なくするために【犬人の洞窟】で多くの物を採集をしていかなければならない。
「とは言っても、手に入る物はあまり売れないと思いますよ」
馬車に揺れながら、この馬車を一番切望していた彼女、紅葉がそう言って来た。まぁ、そうであるとは思ってはいたけれども。
「そう言う、心構えで行こうと言う話だよ。1000Gの損とは言っても、実際的には他にも色々と損失があるんでしょ」
「うん! あると思う!」
……えっと、姫さん。そんな力強く宣言されても困ってしまうんですけれども。
「……ど、どうなんでしょう。けれども、あるとは思うんですよ」
いや、月裏さんのように自信なさげに言われても困るんですけれども。
「……まぁ、とにかくその開放してしまった封印されていたものについての情報はなかったですよね」
と言う質問に首を上下に振ってそうであると言う意思を伝える僕。
「……だとすると、敵は彼ら、Aランクパーティーが見た事のないような得体も知れないモンスターか、それともただの変異種か」
大蛇が出るか、それともただの木の棒だったのか。
出来れば金銭的には大蛇の方が嬉しいけれども、やはりここはただの木の棒、見間違いである事を祈ろう。その方がずっと良い。
「ともかく、【犬人の洞窟】はそこまで強いモンスターは居ない。と言うか、コボルトばかりだと聞いている。そして件のモンスターは、洞窟の奥に居る。出来る限り体力温存、と行きたいので提案する」
僕はそう言って、彼女達に握りしめた紐を見せる。全部で5本の紐だ。
「この中には2本赤く色付けした紐が入っており、その紐を引いた2人がコボルトの応戦。残り3人は奥のモンスターのため、体力を温存して置くと言う作戦を取ろうと思う」
要するに、全員が疲労してそのモンスターと万全のコンディションで戦えなくなるよりかは、2人がコボルトを引き受けて3人、体力を温存して貰った方が後々にしては良いと言うだけの、ただそれだけの作戦だ。
もっと他にも良い策があるのかも知れないが、僕の頭ではこれくらいしか思いつかない。他の4人も納得してくれたのか、それとも良いアイデアが出なかっただけなのか。ともかく、4人とも首肯する。
「じゃあ、引くぞ! せーの!」
そして僕達は紐を引いた。
赤を引いた2人は、
「え、えっと……私です」
「はい、紅葉。頑張らさせていただきます」
月裏さんと紅葉の2人であった。