貰った依頼と仲間の反応
「『犬人の洞窟』?」
と、まず依頼書を見た姫がそう言って、紅葉にその依頼書を渡す。
「Cランク任務、『犬人の洞窟の奥の調査』、ですか。犬人はあまり強くないような、ランクで言うとCランクレベルのモンスターでは無いんですが……なるほど、こう言う事ですか」
紅葉はそう言って書類を見た後、ユリエル姫に渡す。
「……理解した」
そう言った後、月裏さんに渡す。
「えー! ユリエル姫さん、それで良いんですか!? ま、まぁ、良いですけれども……なるほど、こう言う事ですか」
ふむふむ……と言いながら、納得した月裏さんは、僕に返す。そして僕はもう一度内容を見直す。
【Cランク任務、【『犬人の洞窟』の詳細調査】
先日、とあるパーティーがダンジョン『犬人の洞窟』を調査した際、奥に隠し部屋を発見。その奥にあった封印を解除、そして封印されていたモンスターが目覚めたらしい。そのモンスターについて早急に調査、もしくは排除を願う】
何度見ても、割に合わない、と言うかCランクである事が不思議な依頼である。
この『犬人の洞窟』はコボルト、Eランクの冒険者が倒せるような弱いモンスターしか存在しない、初級者向けのダンジョンであり、初心者でも出来るようなダンジョンなのが理由なのか、戦利品と言うかドロップ品もあまり良いのが期待出来ない。さらにこの依頼の報酬が納得出来ない。
【報酬……1000G】
ちなみにそこはかなりの距離があるため、馬車を借りないといけないのだが、行きだけで1200Gかかる。要は採算が取れないのだ。
報酬は1000Gで、馬車を借りた場合、行きと帰りにかかる値段は2400G。ダンジョンで手に入るだろう報酬も期待できないために実質その値段は0Gと考えると、利益計算だと-1400Gと、こちら側の方が損をする計算になってしまう。
この依頼を出している、封印を解いてしまったパーティーは数日後、結婚を控えていて彼らからしたら予定外の出費で、これまでしか出せなかったにしても、これは酷い。道理で誰もやりたがらない訳である。
「まぁ、引き受けて(?)しまった以上はやらないといけないよなー」
あれを引き受けると言うか、それとも無理強いされると言うかは別として、僕はこの依頼を完了しないといけない立場にある。
「……流石に不死鳥でも、4人を一緒には飛べない……ですね」
「ゆ、ユリエル姫さん!? わ、私、そんな事、無理ですからね!」
「……冗談」
「じょ、冗談に聞こえませんよー」
「じゃあ、姫も! 姫も!」
「ひ、姫ちゃんまで……」
既に、何故か『月裏さんの飛翔能力で飛ぶ』と言う事が決まりつつあるが、僕はそんな事を提案した覚えがないし、黙って置こう。そもそも月裏さんの翼に乗ろうものならば、その燃え盛る翼で焼け焦げて終わりだと言う物だし。
「……やっぱり歩いて出来る限り、出費を抑えるしかないですかね」
「ちなみに朝比奈さん、その『犬人の洞窟』に行くには歩いて何日くらいかかるんですか?」
確か、ギルドのあの受付のお嬢さんの話ですと、
「――――――歩きならば、3日はかかると言ってましたね」
「馬を借りましょう、今すぐにでも!」
と、うちのパーティーの中でも一番の体力がないメンバーである、紅葉が力強く言っていた。
それほど歩きたくないですかね、紅葉さん……。