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余り物には……福がある?  作者: アッキ@瓶の蓋。
ハイスキルC×C NEW ENEMY
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死包丁

 死包丁しぼうちょう

 それは4人の刃物系の武器を持った4人の、優秀な冒険者のパーティーである。



 リーダーの長剣を自由自在に扱う細身の剣士、イチ・シュタンタット。

 副リーダーで自由自在に槍を振り回す長身槍士、バロック。

 魔法を使って背後から攻撃する小柄なアサシン、ミヤビ・トキ。

 大剣を豪快に振り回す巨漢の大剣使い、ロック・ロード。



 そのパーティーが暴れると、相手となった者達には死と共に鋭利な切り口が現れるとされる、故に『死包丁』と呼ばれる4人組。彼らは今、彼らのレベルでは考えられないくらい低レベルのダンジョンを探索していた。



 ダンジョンの名前は、『犬人の洞窟』。

 犬の頭を持つ子供くらいの大きさの低級魔物、コボルトが多く出現するダンジョンで、初心者が腕試しにとやるくらいの、そんな普通のダンジョン。



「そりゃあ!」



 と、イチは目の前に現れたコボルトを首から切り離し、地面に転がす。

 イチはこのパーティーのリーダーで、近々結婚を決めようとしている男性だ。細身の身体と、それに宿った細いながらも強靭な筋力はどこぞのアスリートを思わせんばかりに完成された身体つきをしている。

 今回、このダンジョンにこのイチが率いるパーティーが潜ったのは結婚する前に最後の記念にとこのダンジョンの奥地にあるとされる、『誓いの指輪』と言う物を取ろうというものだった。こんな低ダンジョンでも取れるような、何の変哲もないアクセサリーだが、【愛し合う者2人が同時に付けた場合、相手の位置を常に確認できるようになる】と言う不思議な効果から、度々結婚式などに使われるアイテムだ。



「ふー。まぁ、こんな物か」



「おいおい、イチさんよ。そんなに張り切ったら、俺達の出番がなくなってしまうぜ」



 と、張り切ってコボルトを倒しているイチに、副リーダーのバロックがそう口に出す。

 バロックは常にどんな環境であろうとも短い袖に短いズボンを穿いた、長槍の使い手である。長身でイケメンな彼は、常にどんな場所であろうともファッションに心がけ、戦闘中であろうとも美しさを置いて戦う男だ。そして大の女好きであり、前にどこぞの国の貴族のお嬢さんに手を出した際に、その親に指名手配されてしまい、苗字も名前も変えて、ただの歪み(バロック)、と名乗る事にしている。それでもなお、女を口説き続ける彼を見て、イチはいつも悩みの種であったが、その分その気楽さに助けられた部分も多く、今では大の親友となっていた。



「いくら張り切っているからと言って、やり過ぎたら相手さんに迷惑だぜ? 身体を壊したりしたら、逆に女に心配させてしまい、身を引くかもしれないぜ? これ、俺の経験談だからちゃんと聞いとけよな」



「分かってるさ、バロック。程々にするさ」



「そう言って、うちのリーダーさんは張り切ってこのパーティーで一番怪我が多いんだよなー。大変だな、ミヤビ。今なら俺に乗り換えるのも可能だぜ?」



「……断ります。何故、わたくしがお前なぞに乗りかえらなければ、ならないのですか」



 そう言ったのは、小柄な少女、ミヤビ。コボルトと比べても身長がどちらが上かを決めるのが難しいくらいとても小柄な少女は、全身を黒い目立たないような服で覆っており、その腰にはいくつもの短刀を付けている。彼女は元はとある村の村人だったのだが、それをバロック(まだ名前を捨てる前)に口説かれて強引にパーティーに入団。その後、数々の戦闘を得て、今ではアサシンとして高スペックになってしまった、イチと婚約しようとしている少女である。



「……村から出してくれた事には、感謝の念を申し上げますが、それだけです。わたくしはイチさんと結婚するのですから」



「うむ、フラれたな、バロック」



 と、後ろから大柄な男性が現れてバロックの肩を叩く。全身を白い修行僧の服を纏い、頭は丸坊主、持っている物はその2mはあろうかという巨体に馴染むほど大きい大剣を持った男性、ロック。既に子持ち妻持ちの既婚者である彼は、バロックの肩を叩く。



「ああ言う一途なのは、お前の趣味ではなかろう。お前の趣味はもっとぶっ飛んでなかったか? バロック?」



「失礼だなー、おっさん。俺は揺り籠から墓場までどんな年代の女性でも良いし、体格も性格もどんな物だろうとも良いぜ? だから俺の趣味じゃない女性はこの世にいない!」



「ハハ、そうだった、そうだった。お前自身がぶっ飛んでいたな」



 と、笑うロック。そしてイチとミヤビのほうを見る。



「お前さん達、2人で仲良く愛しあうのじゃよ。それから、例えこの依頼で我らのパーティーが解散する事になっても、疎遠になった訳ではない。遠慮なく、頼るが良かろう」



「そうそう! ミヤビちゃんの娘ならば、絶対俺の好み間違いないもん! もし女の子だったら、将来俺が口説いてやるよ」



「……その時は、イチが『お前なんかに娘はやらん!』とか言ってそうです」



「気が早いな、おい。まだ子も出来てないのにさ」



 そう言いながら、仲良い4人組はそのまま『誓いの指輪』を探して奥へ、奥へと入って行った。



 この時、彼らは知らなかった。

 この後、彼らのパーティーが出会い、解いてしまった封印から生まれた『化け物』の事を。

 明日の18時、短編をあげます。『元戦神と囚われの魔導書』と言うタイトルで、元戦神な主人公と魔導書のヒロインの話です。気軽な気持ちで、本編と関係無く見てくれると嬉しいです。それでは。

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