密会の夜(1)
その日の夜。
姫と紅葉、そしてユリエル姫と月裏さんの4人は一部屋に押し込んで僕は別の部屋に泊まった。まぁ、倫理的な問題からすると姫や紅葉、月裏さんは僕の使い魔であり、ユリエル姫も僕の婚約者扱いなので彼女達が納得さえすれば僕も泊まれるんだろうけれども、僕は彼女達と一緒に寝てゆっくりと眠れると思えない。だから深々と遠慮して置いた。
僕は1人、月光が差し込む宿の部屋で休んでいた。
「そう言えば、ポイズンリップが夜に来るって……」
「―――――――――呼んだ?」
と、窓を開けて彼女、ポイズンリップが入って来た。
「私としては、ポイズンリップと言う名前よりも朝比奈二世と呼んで欲しいんだけれどもね。だって、そっちの方が兄さんに妹である事を印象付けられますので」
「そうか……」
どうも彼女は妹である事を強調しているように思える。あまりそんなに強調するような事では無いように思えるんだけれども。それとも重要な事だったりするのだろうか? まぁ、人によって重要になって来たりする事は違って来るので詳しくは聞かない方が良いのだろう。
「さて、僕に何でしょうか?」
「言ったでしょ? 兄さんに『闇』について教えるって」
確かに言っていた気がするが、あれはその場のノリみたいな物だと考えていたんだけれども。
「『闇』は特殊な属性ですからね。『火』、『水』、『雷』、『土』とか言った基本となる四属性とは違って数万人に一人のレベルでしか人間に宿らない属性です。ですので、そんな特別な属性を手に入れた兄さんのその属性を説明したく思いまして」
「『闇』属性……」
確かに『闇』属性はユラギーン・ナイトを倒した際に手に入れた属性であって――――――――良く分からないと言うか、どう言った事が出来るのかをまだ把握しきれていないんだよな。教えてくれるならありがたい、か。
「じゃあ、教えてくれますか、その『闇』属性の性質と言うのを」
「その前に兄さん、聖剣を貸してくれませんか?」
「あぁ、うん……」
僕はそう言って、聖剣を渡す。そう言えばこの聖剣って良く分かっていないんだよな。姫が手に入れた物であり、詳しい名前とかは分かっていないんだよね。
ポイズンリップはその聖剣をひとしきり眺めた後、「なるほど、だからか……」と意味ありげな事を言って僕に返して来た。
「兄さん。必要ないかも知れないけれども、多分大剣も聖剣も新しいのを用意した方が良いよ。今のままだとレベルに合って来なくなると思うし」
「そう……かな?」
まぁ、レベルもだいぶ上がって来たし、そろそろ新しいのに買い替えても良い頃か。
「それと『闇』属性に何か関係があるのか?」
「いえ、今のはただの可愛らしい、そう麗しい妹からのただのアドバイスだから気にしなくて良いよ。そうそう、『闇』属性についてだったよね。
その前に兄さん自身は、『闇』属性についてはどう思ってるの?」
『闇』属性についてどう思ってるか、か。
「『闇』属性の特性は、引力であると言う事くらいかな?」
まぁ、ユラギーン・ナイトが言った事の受け降りだけれども。それを聞いたポイズンリップは「はぁ~」と溜め息を吐く。
「『闇』属性の本質が引力……ね。多分、兄さんの事だから前に倒していた人の受け降りだとは思うけれども、残念ながら違うよ」
「そ、そんなにはっきり言えるほど違うのか……」
可笑しいな、僕も自分で使って見てそうだとは思ったのだけれども。じゃあ、一体何だと言うのだろうか?
「『闇』の本質。それは『吸引』、ですよ」