楽しい食事会
ポイズンリップ曰く、
「朝比奈二世は私と同一個体――――――分霊でしてね。兄である朝比奈揺兄さんについては、どのような事を行おうとしているにしても私には二世を通して兄さんの様子を事細かに知らせていただきまして。
だから、私は兄さんが誰が好きで、誰が嫌いか。何が好きで、何が嫌いなのか。どう言った季節が好きで、どう言った季節が嫌いなのか。どのような場所が好きで、どのような場所が嫌いなのか。どう言った性格で動いて、どう言った物では動けないか。左利きか右利きかと言う常識的な行為は勿論、靴を履く時は右足から履くのか、左足から履くのかと言う事も大切なので」
それって……もはや妹と言うよりかはただのストーカーのレベルに達しているように気がする。
「――――――――まぁ、この世界に来ていた事が分かったので兄さんの邪魔にならない程度に兄さんの後を付けていたんですが、まさか兄さんが死神と対決するとは思っていませんでしたので。慌てて助太刀をしたと言う訳です。どうです、興奮します? 私に惚れたりします?」
「いや、まったく……」
「連れないですね……兄さんは」
そう言いながら食事を勧めるポイズンリップ。
「ご主人様はご主人様なの! だからゆらぎんは私達の主だから、あなたの物にはならないの!」
「あらあら。私は彼を物にしたいとは思ってないわ、けだもの。そうね、彼の"物"にはなりたいけれども♪」
「ムキ―! 言わせておけば、言わせておけば!」
何やら姫とポイズンリップは言い争い、いやただの子供の喧嘩が始まっている。多分、年齢が、詳しく言えば精神年齢が近いからこそこうなっているんだろうな。
「じゃあ、月裏さんはそうやってこの世界に来た――――――と言う事ですか。なんともまぁ、神がこちらの世界に来るだなんて……。信じられない話です」
「え、えぇ……本体は別にあるんですけれども、いえ、これも本体と言うべきなんですけど」
「……神がこんな所に居るだなんて……信じられない。けれども不死鳥と言う事も信じられないんですけれども……。
灰さえあればどんな状態であろうとも復活出来る鳥、そんな不死鳥が居るだなんて」
「えっと、そう言う物なので」
本当に攻めているのならば、姫とユリエル姫が月裏さんにやっているようにこうなるはずなのだから。故に姫とポイズンリップのようなのは、むしろ楽しそうな掛け合いのように思えてくる。
「だからゆらぎんは、あなたの物ではないの! 私達のご主人様なの~!」
「兄さんと私は、既に愛の絆で結ばれてるの。だから、あなたに言われる筋合いは無いわ!」
「「ムムム~!」」
ほら、凄い楽しそうだし。
ともかくその後、食事会は続いて僕達は楽しい食事会をやるのであった。しかし、その最後。僕はポイズンリップに呼び止められた。
「兄さん。実は伝えたい事があるの」
「……ん?」
「私、死を司る死神、【死神殺しの死神】だから実はある属性の使い手なのよね。そう、兄さんも使う――――――――『闇』属性の使い手なの」
彼女はそう言って、ニコリと微笑んでいた。
「後で兄さんの宿屋に行くわね」
彼女はそう言っていた。