死神の格差
リーンベルの持つ異能、【怨恨載せ】。
その異能は単純明快な異能である。『殺した相手の恨みを武器に纏わせて、強さを上げる』、そう言う分かりやすい異能である。それ故に力を付けるために彼は、沢山の人間を殺して力を付けていたのである。
そんな死神、リーンベルは目の前に現れた殺害対象である4人と1匹を見て、ニヤリと微笑んでそのまま殺害対象へと向かって行く。
「二剣流風斬り!」
僕はそう言う風にして迫って来たリーンベルに向かって、聖剣と大剣の二剣流で攻撃する。リーンベルはそれをポン! と僕の身体を跳び越えるようにして後ろに居た紅葉に、その大鎌、首狩を構えて紅葉の身体を斬ろうと行動する。
(……不味い!)
このままでは紅葉があの大鎌で狩られてしましょう。どうやって防ごう。このままだと……紅葉が。
「魔術、水縛り!」
紅葉は水の魔力を練って、紐状の水でリーンベルの両腕を縛り上げる。縛り上げられた両腕によって、リーンベルは攻撃を妨害されてその大鎌を振るえなくなってしまっている。そんな彼に対して、姫が札を投げて炎を放った。放たれた炎は彼の身体を焼いていた。
「熱っ!」
と、リーンベルが熱を怯んでいたのを、すぐさまジャックと呼ばれていた黒猫がその爪の代わりに付けた短剣で黒猫とは思えない速さで、向かって行ってその短剣を振るう。
【―――――猫鋭断分離!】
ジャックはその短刀を自由自在に振るって、リーンベルの身体を切り裂く。リーンベルの両足はそのジャックの攻撃によって、傷だらけにされて血が出ていた。そして彼は傷を受けて倒れる。
「くっ……!」
リーンベルは苦しそうに呻き、そこに鎌を持ったアンジェリーが急接近。鎌を振るう。
「アンジェリー流、鎌芸術腕斬り《アームカッティング》!」
アンジェリーは鎌を大きく振るい、そして鎌でリーンベルの両腕を切り落としていた。アンジェリーのその鎌捌きは見る者を魅了する、そう言う芸術性を覚えるような理想的な攻撃だった。アンジェリーの攻撃によって、落とされる両腕。そしてその腕に持っていた大鎌、首狩も落とす。しかし、それでもなおリーンベルはその鎌を振るおうと口で持とうと口を突きだす。
【アン! ベルはまだ首狩を掴もうとしておる! お主が持つのじゃ!】
「はい、先輩!」
ジャックの言葉を受けたアンジェリーはすぐさまその大鎌、首狩を握りしめて、リーンベルの姿が届かない場所へと移動する。それを見てリーンベルは「フフフ……」と笑っていた。
「圧倒的不利……やはり目先の殺しに囚われてしまいますと、負けてしまうのは自然的な行為でしたか。
ここは避けて通りますか。首狩を失うのはつらいですけれども、私の命には変えられませんし。では、これにて失礼……」
そう言って、リーンベルはその身体で、その生きているのも可笑しいような身体で宙へと逃げ出し、
「私の兄さんを殺そうとして、無事に逃げ帰れるとでも?」
ザクリ、と首を斬り落とされていた。
【お主……!】
ジャックはその少女の姿を見て声をあげる。
「どうして……ここに……」
そして僕もまたその少女の姿を見て、可笑しいと思う。ここに居るはずの人物では無いからだ。そしてその少女は、僕を見てニコリと笑っていた。
「―――――――久しぶりだね、兄さん」
その少女、前の世界で僕の妹で、そして異世界に行く前に死去してしまったはずの妹――――――朝比奈二世は笑顔を向けていた。