彼の鎌と彼女の鎌
【判決殺しの死神】、リーンベル。彼の理念はあまりにも分かりやすい。【One for Me. All for Me.】、【1人は私のために、皆は私のために】が基本の自己中心的な存在の死神、それがリーンベル。
「今日も沢山の人間を私刑にて、死刑にしてしまいました。今日は15人……いつもよりかは少ないですね」
彼はそう言いながら、眼鏡をピクピクと動かす。
「まぁ、罪を犯したら殺されるのは当たり前と言えば、当たり前ですしね。殺されて当たり前、ですか。さて、明日も私の世界のために判決を下しましょう」
リーンベルはおぞましい殺気を放つ最古の大きな鎌を構えながら、誕生都市ローレライの道を歩いていた。そんなリーンベルの目の前に、1人の女性と1匹の黒猫が現れた。
スラッとした体格で背中に大きな鎌を背負った、白いシャツの上に黒い学生服を着た黒髪おさげの女性の死神。金の瞳の、爪ではなくて爪1つ1つに尖った短刀を付けている宙を浮かぶ黒猫。アンジェリーとジャックと言う死神達はリーンベルの前に立ち塞がっていた。
【見つけたぞ、【判決殺し】】
「……リーンベルさん」
ジャックは猫目でリーンベルを鋭く見つめ、アンジェリーは自身の鎌を背中から外して、リーンベルに突き出していた。
「ジャックに――――――見覚えないから下位の死神、か? どうして私の前に立ち塞がるんですか? 進路暴行罪と恐喝罪の2つで死刑判決にしても良いんですよ? 事情を言わないとただただ殺しますよ、お前ら?」
リーンベルはいつも通りの感じで、死刑判決を下していた。それに対してジャックは諦めた声を出す。
【【判決殺しの死神】、リーンベル。無意味に判決を下す、殺す理由を求める殺したがり。相変わらずなんじゃな、ベルよ。
まぁ、今回は私はベルに用はない。用があるとしたら――――――こいつじゃ】
と、ジャックはそう言って、アンジェリーの方に向ける。アンジェリーは鎌を構えている。
「リーンベル、【判決殺しの死神】。あなたの鎌、最古の鎌である首狩は鎌を使う死神達にとって憧れでした。無駄なく殺すあなたの姿は、憧れとしか思っていました」
「勝手に私を美化しないで欲しいな。名誉棄損罪も一緒に追加しましょうか?」
「けれども、その性格が。
相手に殺す理由を求める、ただの殺したがり。判決と言う名の、ただの殺す対象への理由付け。
私は鎌に関しては尊敬していますが、それ以外は尊敬していません。ですから、その鎌を、その最古の鎌である首狩を頂戴します」
彼女はそう言って、じりじりと近寄って行く。
「―――――――罪状その1、私の進行を妨げた。進路妨害罪。
罪状その2、私を脅した。脅迫罪。
罪状その3、私の事を勝手に語った。名誉棄損罪。
以上の3つの罪により、あなたを処刑いたします」
リーンベルは最古の鎌である首狩を、アンジェリーに向けていた。
「なお、1人の男に固執しすぎる執着罪を理由に、あの2人も殺します」
と、リーンベルは鎌をアンジェリーの後ろに居る2人にも向けていた。
そこに居たのは、朝比奈揺を追っていた姫とユリエル姫の姿だった。
「なっ……! あの2人は関係ないじゃないですか!」
アンジェリーはそう怒り出す。それに対してリーンベルは普通にこう答えた。
「君。判決とは常に理不尽で、身勝手で、そして劇的なんだよ」
リーンベルはそう何事もないように言っていた。