姫ちゃんと紅葉、夜に出かける
丁度、タヌキツネの姫ちゃんとリッチである私の主である朝比奈揺が月裏さんと念話で話している時、私は宿屋、『ハツカイ』の2階の自分に割り当てられた部屋でベッドに……ではなく、床に寝転がっていた。
「あぁ……。土で寝転がってるみたいで、落ち着きますー」
あぁ、本当に落ち着く。なんだか気持ちが本当に良い感じに落ち着く。やっぱりリッチはこれだなと思う私。
「……コポン」
それを何だか嫌そうな目で見つめる姫。どうやら彼女としては主と同じ部屋で寝たかったみたいですが。
「そう言う訳にもいかないじゃないですか、姫ちゃん。姫ちゃんが狐と狸の、ただの小動物ならば問題はありませんけれども、姫ちゃんは獣人。しかも女じゃないですか」
「コポン、コポコポン!」
「そんな可愛い鳴き声を出して騙されるのは、姫ちゃんの言葉を理解出来ていない人だけだからね。姫ちゃんのその野望を知ったら、主も嫌うかもよ?」
そう言うと、姫ちゃんは明らかに狼狽する。別に悪い事では無いんだけれども、もしそれが悪い意味で働くと嫌な事になるために私は忠告しているんだけれども。
「コポ、コポコポン!」
「まぁ、それだったら主のために、魔物退治をしません、姫ちゃん? 主はお金が無くて、困っているみたいですし」
どうやら人間はお金で物を交換しているらしく、お金を稼ぐには物を売ったりしないといけないらしいです。最初は私は催眠術の魔法、姫ちゃんは小動物の振りをして物を奪う手段を使おうとは検討しては見たが、どうも主から嫌われそうだと思った私達は止めておいたのだが、どうやらそれで正解だったみたい。
「お金があれば、もっと良い物を買ってもらえるし。それにもっと感謝してもらえるかもね?」
「……コポン? コポンコポン?」
「うん? そうだね、じゃあ私の方から頼んであげる。姫ちゃんの頭を撫でて貰えるように、さ」
そう聞くと姫ちゃんの反応は速かった。既に扉の前に現れて、速く行こうと急かしている。変わり身と言うか、対応が速いね。本当に。
「さっ、行こうか。姫ちゃん。とりあえず魔物を狩って、そこから剥ぎ取れる物を剥ぎ取って主に渡しましょう。換金は私達には出来ませんし」
「コポ、コポンコポ」
「うん。まずは今日歩いていた道の魔物を一掃です」




