表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

白い涙

 


 私はこの世界に来て2年経が経った。

 三頭身スタイルも少しは成長して、体もだいぶ大きくなった。と言っても、その大きさは柴犬程度の大きさだ。

 私は相変わらず、赤い子と過ごしたり、他の子と遊んだりするけど、最近では人型になれるようになったので、常時人型で行動している。その為か、最近では同じ雌竜の黄い子とも頻繁に遊ぶようになった。

 人型になった私は、とりあえず驚いた。何に驚いたって?全てにだ。

 見た目が中学二年生ぐらいで、透き通るような白い肌に、白銀の髪。そして、ワインレッドのような深い赤い瞳という、前世では全くの馴染みの無い色に驚いたのだ。

 前世の私は日本人で、女子高生で、身長155センチで、黒髪黒目だった。


 そうなんです。報告が遅くなりましたが、最近では少しずつ前世の事を思い出しはじめました。

 思い出したのは日本人で私の名前は、佐久間理奈。年齢は17歳。

 そして、前世の私はコンビニの帰りに車にひかれて呆気なく死んでしまったという事。

 なので私は、″転生″というものをしたんだと思う。

 思い出したきっかけは、ちょっとした段差で躓いたのがきっかけ。

 これがきっかけになって、名前とかは思い出したんだけど、家族や友人の顔や名前は相変わらず思い出せないでいる。

 2年経った今は、それで良いかなとも思う。

 2年経った今、竜である事を私は受け入れている。だから、少し寂しいけれど、親や友人の名前を思い出さないほうが良い。

 

 前世では深く考える事が得意じゃなかった。なんとかなるよね、で過ごしていても、周りが優しくて許されてた。

 だから、今度は頑張ろうって思ってる。

 

「白い子!聞いてるの!?」

「え、な、なになに?」


 突然の大きな声に振り向くと、ふわふわとしたはちみつ色の髪で、琥珀色にキラキラ輝いている可愛らしい女の子の目が目の前にいた。


「う、うわわ!近いよ!黄い子!」

「お黙りなさい!ねぇ、貴方、近々ある公開式どうするつもりなのよ」


 いきなりの美少女のドアップに驚いたので抗議の言葉を言えば一蹴にされてしまった。しょんぼり。


「え、公開式ってなあに?」


 この世界と竜の事がさっぱりわからない私は、ある程度の知識を赤い子に教わった。その中に、”公開式”なんて言葉はなかったはずだ。

何か特別な事なのかな?と思いながら聞いてみると、衝撃的な事を言われた。


「や、やだ!貴方知らないの!?…私たちの番となる騎士との、そうねぇ…契約の場よ」


 えへへ、知ってるにきまってるじゃな~い♪と答えたかったけど、契約の場っていう知らない言葉が出てきて、知ったかはできなかった。


「はじめて聞いた」

「そうなの?っていう事は、貴方にはまだ特定の相手はいないのよね!良かった~」

「よ、良かった~じゃないよ!教えてよ、契約の場ってなんなの?」


 契約、番の事は赤い子に前もって聞いていたので知識はある。

 けど、契約の場とか公開式だなんて一切聞いた事がない。


「えーっとね、私たちは番、つまり契約者よね。それを公開の場で決めるのよ。 沢山の騎士が集まっていてね、その中からビビッ!って来た人を契約者にするわけ!」


 ちょ、ちょっと待って!?ビビッ!って何…!?

 そもそも、契約者と番ってイコールなわけで…一度契約してしまったらそれを破棄する事は出来ないって教えてもらった。

 つまり、永遠の相手、という事だ。その、永遠の相手を「ビビッ!」で決めてしまうって事!?


「実はね、昨日、契約した子がいるの。私、公開式までは気にしなくても良いわねって思ってたけど、他の子に先にいかれちゃって、少しショックなのよね」


 ふぅ、とため息を付く黄い子はとっても可愛らしい。ふわふわのはちみつ色の髪は黄い子の可愛さを格段にあっぷさせてると思う。

 けど、今はそれどころじゃない。

  黄い子は真剣に溜息をついている…。という事は、冗談ではなく、どうやら本気で「ビビッ!」で契約者を決めなければいけないらしい。

 前世の私は、兄’Sが邪魔をしたのもあって良い雰囲気のお友達まではできた事があったが、彼氏が居たことは一度もなかった。

 そんな私に、「ビビッ!」で番を決めろというのは酷な話だと思う…。


 っていうか、出来れば…「ビビッ!」なんかじゃなくて、ほんとに好きな人と番になりたいよ!!


「もう!白い子、ちゃんと聞いてるのっ!?」

「え、うん!聞いてる聞いてる!ビビッ!でしょ!」

「もう。貴方って、ほんと、どこか抜けてるわよね…。あのね、驚かないで聞いてほしいのよ?」


 そう言って語りかけてくる黄い子の顔は可愛いんだけれど、いつになく真剣だ。そして、その瞳の奥には憂いを帯びているようにみえる。


「うん?」


 あぁ、こういう時の話って、大体が嫌な話だったりするんだよね。

 前世でもこういう雰囲気の時は稀にあった。

 良い雰囲気だった男の子に告白したら、『悪い、理奈のお兄さん達に結婚する気がないなら手を出すな。って言われて…。理奈の事、好きだけど…まだ学生だし結婚とかって考えてないんだ。だから…』と振られたのを思い出す。

 あぁ、あれは誰だったかな?竜となってしまった今では、全然思い出せない。


「あのね、昨日契約した竜って、赤い子だって聞いたのよ」


 ほら、やっぱり、全然良い話なんかじゃなかった。


 変だな、とは思ったんだ。いつも一緒だったのに、昨日の夜、赤い子は私や黄・青・緑い子がいるこの部屋に帰ってこなかった。

 怖かったから、不安だったから深く考えないようにしてた。

 契約をした竜は此処には帰って来ることはない。雄竜は特にだ。常に契約者の傍にいる。


「そ、そっか…赤い子、だから昨日帰ってこなかったんだね」


 私はこの世界で竜として産まれてから、赤い子にべったりだった。

 だから、なのかな?今までみたいに「なるようになるよね!」なんて言葉で済ませる事が出来なくて、気が付いたらぽろぽろと透明の涙が零れ落ちてた。


「ちょ、ちょっと!白い子、泣かないでよ!」


 私が突然泣き出したから黄い子は傍に来て頭をなでてくれた。


「だって、だって…」

「赤い子、貴方に何も言わなかったのね。何故なのかしら…。けどね、私は、ううん、私たちは貴方と赤い子がずうっと一緒だったの見て来たわ!だから、だから…っ」


 黄い子は言葉に詰まってしまった。そう、赤い子が私に黙っていなくなってしまったのは事実なのだ。


 ずっと傍にいてくれるって言ってたのに。


 守ってくれるって言ってたのに。


 お兄ちゃんになってくれるって言ってたのに。


 竜同士では番になる事は出来ないという話を聞いてから、いつか離れなくてはいけないのはわかってた。

 けど、赤い子が先に番に出会ったら、傍にいてくれる事も守ってくれる事も無理だとはしても、一番に教えてくれると思ってた。


 教えてくれる事すら無かったという事は、大袈裟なのかもしれないけれど、拒絶なのだと私は思う。


 私の存在を無視してるって、事だよね?


 違うのかな?私は間違ってるのかな?


 けど、心が、苦しくて仕方がない。


 赤い子に会いたいけれど、会いたくない。会うのが怖い。

 どうして黙っていなくなってしまったの?どうして?


 泣き止んだ私は、黄い子に一言謝って、しばらく一人になりたい。と告げた。

 黄い子は「貴方は一人じゃないわよ。貴方がどう思っていても、私は貴方の友達よ」と言って去って行った。

 赤い子にべったりだった私に、他の竜たちは物凄く優しい。

 こんなに悲しい気持ちの時でも少しだけ心がぽかぽかになる。

 けど、今は赤い子を信じたかった。

 黄い子に、赤い子が契約をしたと教えてもらった日から7日間、寝ずにずうっと赤い子を待ってた。きっと、笑って「教えるのが遅くなってごめん」って言いに来てくれると信じてた。

 それでも、赤い子は来なかった。


 そして私たちのお世話をしてくれるお姉さんから告げられたのは、凄く、残酷な真実。


 赤い子は、契約した人と、王都というとても離れたところへ行ってしまったという知らせだった。

見てくれる人がいる、って嬉しさと驚きです(汗

拙い文ですけど、頑張ります。

※黒い子→白い子 ですね。申し訳ないです。訂正しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ