学校祭の姉 5(終)
ベッドの中で、私は劇の台本をパラパラとめくっていた。
「……」
普通に読むなら、いつも読んでいるような本と同じく読むことが出来る。
しかし、これを実際に自分が演じるとなれば話は別だ。
こんな事……こんな事が、将と出来るわけがない。
「……『離れないでよ』」
口に出してみるが、その瞬間に顔が真っ赤になってしまう。
この言葉を、劇で将に向かって私が言うのだ。それも、みんなの前で。
「……将」
何とか、顔が真っ赤にならないように頑張らなければ。
そうしないと、私が弟が好きだということが他の人たちにバレてしまう。
「……何か疲れてない?」
「何でもないよ」
夜、俺の部屋で百合姉と一緒に同じベッドに入っていた。
百合姉が俺の顔色を察したらしく、優しく腕で包み込んでくれた。
暖かくて、すべすべしていて、そして綺麗。眠りに引きずられそうだ。
「劇、上手くいってる?」
「何とかな」
百合姉は俺のほうを向き、細い目で俺を見た。
年上のお姉さん、というオーラが全開で、俺は萎縮してしまう。
「私は将を応援してるわ。何かあったら、私に聞くのよ」
「……うん」
「可愛いわね。将ったら」
「なっ」
百合姉の腕が俺の背中を這い回り、そして俺を思い切り抱いた。
身体中に姉さんの気持ちが伝わってくるようで、俺は動けなくなってしまう。
「……しばらく将を抱いてなかったから、このまま離れられそうにないわ」
「朝には離してくれ」
「どうかしらね?」
意地悪そうに笑う百合姉を横目に、俺は何とか眠りにつこうと目を閉じた。
百合姉の艶かしい身体が俺を眠りの世界に引きずり込んでくれたのか、俺はすぐさま夢の世界へ落ちて行った。
朝起きたら百合姉が服を脱いでいたのは秘密である。
学校祭当日の様子は次の「学校祭の姉(当日)」でお送りします。
どうかお楽しみに。




