学校祭の姉 2
「劇係を選んだの? 将君」
「……まぁ、面白いと思ったからな」
休み時間、俺と愛理姉は廊下でそう会話していた。
劇係には美香姉も入っていて、周りからは何だか期待されているらしい。
特にこれといって何かするとは聞いていないが、なんだかな。
そう俺が考えていると、突然校内放送が入った。
〈劇係を選んだ生徒は、放課後体育館に集まってください〉
劇のストーリーや割り当てを決められるのだろうか。楽しみだな。
愛理姉は笑顔になり、俺の目をじっと見て言う。
「将君ならいい役になれるよ。期待してるからね!」
そう言って、愛理姉は自分の教室へ走って行ってしまった。
廊下に残された俺は次の授業の事を思い出しながら、愛理姉の後ろ姿を見る。
あぁ、やっぱり愛理姉って可愛いな。おっ、少しこけそうになった。
すると、突然後ろから肩を強く叩かれる。
「なぁにボケッとしてるんだ将!」
振り返るとやはりそうだった。俺の悪友である健一がそこに立っている。
健一はニヤニヤしながら俺をにらみつけていた。こ、怖い。
「どうしたんだ? 健一」
「それはこっちのセリフだぜ将。愛理さん見て鼻の下伸ばすなよ」
「ち、違う!」
健一の言葉を俺は否定するが、健一は何か理解したようにうなずく。
そして、そのまま俺の所から立ち去って行ってしまった。
放送にあった通り、放課後、体育館に俺たち劇係は集まっていた。
まだ何の劇をやるかは聞いていないので、おそらく今発表するのか。
「えーっと、全員揃ったか?」
劇係のトップらしき人物がやってきて、俺たちの前に立った。
一枚の紙を持っていて、何を書いているかはよくわからん。振り分けか?
「それじゃあ、何の劇をやるかをこれから言うぞ」
俺たちの間に緊張が走った。
隣に立っている美香姉はうつむき、そわそわと動き回っている。
「今回やる劇は、簡単なお芝居だ。恋愛物をやる」
恋愛物か。誰と誰を主人公とヒロインにするんだろうか。
そう考えていると、なぜかトップらしい人は俺と美香姉を見る。
ん、何ですか? 嫌な予感がするんですけれど。
「そこの白金姉弟に主人公とヒロインを頼もうと思う」
「えっ」
「へっ」
俺と美香姉は口をあんぐりと開け、互いに顔を見合わせた。
俺と美香姉の、恋愛物の劇をするのか?
「台本は後で渡しておくから、家で練習しといてくれ」
「……」
「……」
大変な事になりそうな気がする。