罰ゲームな姉 4
女子トイレから出た俺は、さっきの男に注意しながら辺りを散策した。
今度は美香姉か百合姉のどっちかを見つければよいわけなんだが。
「……」
理子姉には、愛理姉のいる遊具の所へ行って、と伝えてある。
これで心置きなく姉さんたちを探せるわけだ。
しかし、どこに隠れてるんだろうな。
まさか公園の外に行ったとかではないだろうし。
「……いねぇな」
辺りを見るが、姉さんたちはいない。
だが、俺は一瞬だけ何かを目撃した。
「ん?」
草むらが、がさっ、とかすかに動いたのだ。
辺りに風はない。小さな動物がいそうな気配もしない。
もう一度そこを見るが、動く事はなかった。
「あそこか?」
足音を立てないよう、俺はそっと草むらの後ろへと回る。
そして、草の間から何かの後ろ姿を見た。
「……」
短髪の女性がちっちゃく屈んでいる。美香姉だ。
俺は心臓の鼓動を抑え、後ろからそっと美香姉の両肩に手を置いた。
「ほい」
「……!?」
美香姉は震え上がり、かくかくとしながら俺のほうへと振り向いた。
まんまるい目には涙が溜まっていて、腰が抜けたらしく地面へ座っている。
俺は優しい笑顔を見せ、美香姉に視線を合わせるためその場にかがんだ。
「つかまえた」
「……将」
美香姉はその場で俺をじっと見つめる。
俺と美香姉は向かい合うように座り、お互いをさらに見つめあう。
お互いに照れてしまい、顔を赤くしながらうつむいた。
俺は今、自分の本当の姉さんの前にいる。腹違いではなく、実姉。
本当の姉弟なのに、俺は美香姉の事が好きになってしまったのだ。
「……するぞ?」
「うん」
俺と美香姉は互いにうなずくと、少しずつ顔を近付けていった。
美香姉は目をつむり、そのままゆっくりと動く。
俺は優しく美香姉の背中を撫でると、美香姉の唇に自分のをくっつけた。
愛理姉たちよりは唇が薄い気がしたが、それが美香姉のキスだ。
「ん……」
「んっ……」
優しくて、どこか切ないキスの後に、俺は美香姉と互いに微笑みあった。
だが、俺にはこの時間がいつまでもは続かないと思えて仕方なかったが。
美香姉もそれを分かっていたのか、少し悲しそうに口元を上げた。
俺が、美香姉を幸せにしてあげたい気持ちも徐々に大きくなっている。
「大丈夫だ。美香姉」
「ありがとう、将」
美香姉は俺の胸に飛びつくと、その場で安心したかのように笑顔になった。
まるでそれは、自分の住処に戻ってきたハムスターのようだった。




