罰ゲームな姉 3
「……」
遊具の中から外を眺めていた。
愛理姉は壁にもたれかかり、そこでぐっすりと寝てしまっている。
大分疲れたのだろうか。それとも。
「他の姉さんたちは……」
遊具の中に愛理姉を一人だけにしておくのもなんだったが、探すか。
公衆トイレの方をじっと眺め、様子を見る。
近くのベンチに青いツナギを着た男が座っている以外には何もない。
「……ちょっとトイレ行くか」
トイレまで走っていき、中に入ろうとした時、その男に声をかけられた。
「そこの君」
「な、何ですか?」
早くトイレに行きたいというのに。何なんだこの人。
青いツナギを着た男の人はさらに言う。
「やらないか」
ウホッ、いい男……ってなるかボケ!
何かどっかで見たことがあるような人を通り過ぎようとするが、その青ツナギ男は俺の肩をがしっと掴む。
「なあ。やらないか」
「え、遠慮しておきます、って、ちょっ!」
振り向くと、男は何故かツナギのチャックを下ろし始めていた。
しかもこいつ、ツナギの下に何も着てないぞ。俺やばい? やばいの?
「や ら な い か」
「将君!」
公衆トイレの影から理子姉が出てきた。みーつけた。
理子姉は俺を横に体当たりで飛ばし、男と俺の間に立ちふさがる。
まずい理子姉。その男何するか分からん。逃げろ!
「……何だ、ノンケか」
「ノンケ?」
ツナギのチャックを閉じ始めた男は、がっかりしたような顔で言う。
何だか物凄く残念そうだな。やっぱこの人なんかおかしいぞ。
「将君。中に来て」
「中って……え、ちょ、そっち女子トイレ……!」
俺はずるずると理子姉に引っ張られ、女子トイレの個室へと連れて行かれた。
その視界に、何かセーターを着た男を誘っているさっきの男の姿があった。
「やらないか」
「ウホッ、いい男……」
俺、理子姉に引きずられて良かったかも。あとここのトイレもう行かんわ。
女子トイレの個室に、俺と理子姉はぎゅうぎゅう詰めになっていた。
「ごめんね。本当は外でしたかったんだけど」
「理子姉……」
「静かにして」
そう言って、理子姉は俺のほうをじっと見てきた。
理子姉の口元が「キス、するんでしょ」と動く。
今更引き下がるわけにも行かないので、俺は理子姉に優しいキスをした。
「……ふふっ」
理子姉は微笑むと、俺をその場で力強く抱きしめる。
そして、俺の耳元でこうささやいた。
「お姉ちゃん、将君に捕まっちゃった」
「理子姉……」
理子姉は優しくて、そして頼りになる女性だった。
スタイルの良い身体を腕で包みながら、俺は理子姉のにおいをかぐ。
「……そろそろ出よう」
「ああ」
理子姉が辺りに誰もいないことを確認し、俺と理子姉は外に出た。
理子姉の汗のにおいがふんわりと、さっきの個室からただよう。
そして、壁一枚挟んだ向こうから「アッー!」という声も聞こえた。