くっつく姉 3(終)
権力という物はかくも恐ろしい。
俺と愛理姉は、百合姉の部屋で事情聴取を受けていた。
「……で、まだ煮込んでいる途中かしら?」
「そうだよ」
「そろそろ時間?」
「見てくるね」
愛理姉は百合姉の部屋から出て行った。
残された俺は、パソコンの前に座っている百合姉とふと目が合う。
「愛理とのキス、気持ちよかった?」
「な、何でそれを」
「いいからいいから」
百合姉は、まるで小学校にいるいじめっ子のように俺にたずねてきた。
それに逆らえないのが、悲しくとも弟の定め。
俺はごまかす事も考えたが、百合姉の前だという事もありそれはやめた。
「……気持ちよかった」
「どれ位?」
「やわらかくて、そして何か吸い込まれそうで」
「ふぅん」
愛理姉が俺を包み込むように抱いたのは、俺を逃がさないためなのだろうか。
あの時、愛理姉が俺に愛情を注いでくれていたのは確かである。
やわらかい人で、母親のような、それでも子供っぽさの残る愛理姉。
思えば、愛理姉が何だかおかしくなったのは百合姉と何かあったからだ。
「百合姉。愛理姉になにかしたのか?」
「うふふ。何したと思う?」
「……まさか、ね」
「そのまさかよ」
百合姉は立ち上がり、俺をベッドに思い切り倒した。
百合姉は上に乗りあがってきて、俺は身動きが取れなくなってしまう。
だが、不思議と危機感はなかった。
「私が、愛理を積極的にさせたの。愛理は意外に奥手だから」
「それじゃあ、あの時……」
脳内に、旅館のテラスで百合姉と愛理姉が戯れていた事が蘇る。
それを察知したのか、百合姉はフフっと微笑んだ。
「そう。起きていたのも、全部知ってたわよ。だって男の子でしょ?」
「うっ……それを言われると」
可愛い声をあげて悶える愛理姉を見て興奮していたのは事実だ。
百合姉の言葉は、何一つ否定しようがない。
「将。今日は私と一緒に寝てくれるかしら?」
「百合姉と?」
「ええ」
百合姉は俺をじっと見つめてきた。
流石に、ここまで見つめられてしまっては断るわけには行かない。
「分かった」
「じゃあ、今夜楽しみにしてるわよ」
百合姉が離れ、俺が起き上がったとき愛理姉が入ってきた。
愛理姉は出来たのか、俺に早く来てくれ、とうながす。
「豚の角煮、やわらかくておいしいんでしょうね」
「……日頃の感謝だからな」
「ありがとね。将」
愛理姉に腕を引っ張られ、俺は台所へ向かった。
愛理姉と将来暮らすのなら、こんな生活になるのだろうか。
百合姉と将来暮らすとしたら、どんな生活になるのだろうか。
未来に思いをはせると、少しだけ心が軽くなった気がした。




