くっつく姉 1
第3期スタート☆DA
姉さんたちには本当にお世話になっている。
その恩返しをしようと、俺は愛理姉の前に立っていた。
「なぁ愛理姉。今度料理俺が作っても良いか?」
「えっ、いいの?」
「……たまにはな」
「私も手伝うよ!」
愛理姉はすっかり乗り気になった。
一緒に買い物でも行こうか。
「買い物行くか?」
「うん! ……将君とデート」
「えっ?」
「な、何でもないよ」
今日の晩御飯は豚の角煮とかでも作ろうかと考えている。
買い物籠を持っている俺の左腕に、愛理姉はぴとっと寄り添っていた。
「愛理姉、頼むから離れてくれ」
「やだもーん」
愛理姉が可愛くて、俺はこれ以上何も言えなくなってしまった。
本当は離れて欲しくない。ずっと、俺にくっ付いていて欲しい。
そう思うようになってきている俺は、ただその場で微笑んでいた。
「将君! これこれ!」
愛理姉は豚肉を見ると、そこに飛びついて豚肉二パックを持ってくる。
今の愛理姉は、本当に楽しそうだった。
先日の迷っていた愛理姉ではなく、本当に純粋な愛理姉。
そして、俺はふと遠目に誰かを目撃する。
「……ん?」
向こう側の人物は俺に気づくと、手を上げてこっちにやって来た。
「久しぶりだな、将」
「健一か。お前も買い物か?」
「ああ。……何だ、お前は愛理さんとデートか」
「……デート言うな」
顔を赤くした俺に向かい、健一は笑いながら語りかける。
一方その頃、愛理姉はというと俺に背を向けて野菜をあさっていた。
「全く。素直になれよな、将」
「そういうお前はどうなんだよ」
「俺はいつもこんな感じさ。お前と違って女には縁がないがな」
そう言って健一は笑い飛ばした。
俺も何だかおかしくなってきて、笑いがこみ上げてくる。
「じゃ、俺はそろそろ物買って帰るわ」
「じゃあな、健一」
「おう」
健一は俺に手を振ると、俺の視界から消えていった。
愛理姉はネギを片手にこちらへ歩み寄り、かごの中に優しく入れる。
「健一君いたの?」
「ああ。少し話をした」
「なんて言われた?」
「……デートか、て」
俺からそれを聞いた愛理姉も顔を真っ赤にした。
やはり腹違いの姉でも、俺と愛理姉は似ている所があるんだな。
愛理姉は急にしおらしくなってしまったが、逆にそれが可愛く見えた。