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禁則破りの臨界温度 17

理子姉かわいいよ理子姉。

旅館の女将に別れを告げ、俺たちは長い宿泊生活を終えた。

理子姉のミニライブをやる場所である大型ショッピングセンターに向かう。

「……ねぇ、百合姉」

「何?」

車の運転途中、理子姉と百合姉の間でこんな会話があった。

「少しだけ、将君を借りてていいかな」

「……別に良いけれど、どうしたの?」

「何でもないよ。……ただ、ちょっとね」

「ふーん」

百合姉は意味深な微笑を浮かべ、バックミラーごしに愛理姉を睨んだ。

愛理姉は少し怯えたかのような声を上げ、その場で縮こまる。

その隣で美香姉は本を読んでいた。酔わないのか。

「着くよ。将君」

「……ああ」




理子姉のライブまでは時間が少しだけある。

ショッピングセンター内で別れ、俺と理子姉はスイーツ店に来ていた。

もちろん有名人の白金理子とはバレないようになっている。

サングラスをかけ、髪形をいつもと少し変えているのだ。

声でバレる危険性があるので、俺が頼む事になる。

「チーズケーキパフェください」

勘定を済ませ、俺と理子姉は空いている席に座った。

大きなチーズケーキパフェがやってきて、理子姉の口元は緩くなる。

そして、俺はパフェのチーズケーキ部分をスプーンで取り、口を開けている理子姉に向かって渡した。

俗に言う「あーん」である。……何だか恥ずかしいな。

「おいしいぃ」

辺りに人がいなくなりかけた頃、理子姉はサングラスを外した。

理子姉の目が、もっとしてと俺に頼んでくる。

「……わかったよ」

俺は少し躊躇しつつも、再び理子姉の口元にパフェを取って運んだ。




パフェがなくなったら、理子姉は俺をゲームセンターに引っ張っていった。

着いた場所は……プリクラである。

「撮ろうよ。将君」

「……」

「どうしたの?」

「あまり乗り気になれなくて」

 正直の所、俺はあまりこういう物は好きではない。

 写真を撮って持ち運ぶという意味がよくわからないのだ。

「私もやった事無いから大丈夫だよ」

「……大丈夫ならいいけどさ」

 俺と理子姉はプリクラ筐体の中に入った。

〈フレンドコースとカップルコース、どっちかを選んでね♪〉

 お金を入れるとそういう音声が聞こえてきた。

 理子姉が選んだのは……か、カップルコース?

「え、ちょ、これ」

「いいのいいの。将君に甘えたいんだから」

そして、撮影タイムが始まった。

一枚目。

「将君むぎゅぅ」

二枚目。

「疲れたよぉ」

三枚目。

「にゃあにゃあ」

四枚目。

「いただきまーす!」

五枚目。

「ZZZ……」

六枚目。

「フフ……んっ」




落書きタイムという物があるらしい。

長いそれを終わらせた理子姉は、出来上がった写真を持って出てきた。

「世界に二つだけの写真だよ。将君」

「……派手にやったな。理子姉」

「一番良いのこれかな?」

理子姉が指差したものは、六枚目に撮った写真だった。

シャッターを切る寸前で理子姉の頬へのキスが入り、それが映っている。

その下には「付き合って6ヶ月」という文字も。

……つ、付き合ってとは一体何のことなのだろうか、その、えーと。

「お顔真っ赤ですよ? 将君」

「な、何でもないって!」

理子姉は、まるで俺の彼女の様に振舞っていた。

いや、振舞っていたのではない。

これが、素の理子姉の姿なのだ。

人に甘え、どこか頼りなく、そして感情を爆発させる。

家でも、テレビでも見ることが出来なかった姿がそこにはあった。

「そろそろ愛理ちゃんたちも待ってるよ?」

「戻るか」

「うん」



都合により、一日4話だったのを一日2話にします。

すいません。

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