禁則破りの臨界温度 15
俺のフライドポテトが残り少しになりかけた頃、理子姉たちと合流した。
理子姉は焼き鳥。
愛理姉はわたあめ。
美香姉はりんごあめ片手に本を読んでいる。
「あれ、もう合流したの?」
「うん。愛理たちも満足したみたいだから」
俺の問いかけに対し、理子姉は微笑みながら答える。
そんな理子姉は浴衣姿だったおかげか、まさに月下美人だった。
和服独特の重ね着で身体のラインは見えないが、身体全体から発している色気は超一流。
雑誌のモデルとでも言えば伝わるのだろうか。その位綺麗だった。
「……」
「……あ!」
物思いにふけっている俺は、愛理姉の声で我に返った。
愛理姉は急に俺の手を引くと、近くの屋台に走っていってしまう。
その屋台とは、金魚すくいの事であった。
「ねぇ、一緒にやろうよ!」
「い、いいけど」
美香姉も微笑みながら近づいてきた。
どうやら三人でやろう、という事らしい。
屋台のおじさんにお金を渡し、俺たちは網を受け取った。
「始めるぞ」
「うん」
「……」
一斉に金魚をすくいはじめた。
スピードで勝負をつけにいく俺。
落ち着いて一匹ずつすくっていく愛理姉。
どこで覚えた、という技を使い金魚をすくっていく美香姉。
はたから見ている理子姉と愛理姉は寄り添いながら、笑顔でこっちを見る。
「あ」
最初に網が破けたのは、愛理姉の物だった。
愛理姉は悲しそうな顔をした後、しぶしぶ破れた網を返す。
すくった金魚は4匹だ。
「……」
「……」
俺と美香姉の一騎打ちになった。
今の所、俺は8匹。美香姉は9匹だ。
俺の網はそろそろ限界に近づいている頃合か。いや、美香姉のもだ。
「……」
一匹、すくった。
これで五分五分。お互いに形勢は互角だ。
美香姉はその大きい目で金魚を凝視して、狙いを定めている。
愛理姉は俺と美香姉の間でかがみ、興味深そうにこっちを見ていた。
「……あ」
俺の網が破けた。
あともう少しで美香姉よりリード出来ていたのに。
悔しい思いを噛み締めながら、俺は係の人に破れた網を返す。
そして、美香姉の目が光った。
「……!」
「……えっ?」
俺と愛理姉はそれを見た瞬間、恐怖に似たようなものを感じた。
美香姉の網は斜めに入っていき、金魚を一旦網の上にのせる。
そして金魚はいったん網の上で跳ね上がった。
美香姉は網の硬い軸で金魚を受け止め、網の上を滑らせる。
そして滑らせた先にある金魚入れの中に、10匹目は入った。
「……ふぅ」
美香姉はそれで満足したのか、水の中に網を突っ込んで振り、破く。
その姿が、俺にとっては何だかかっこよく映った。
旅館の部屋に戻った俺は、愛理姉、百合姉と一緒に外のテラスにいた。
愛理姉は先日の夜の事を思い出したのか、何だかきまずそうだ。
「……涼しいな」
「ええ」
「うん」
風が吹く中、椅子に座っている俺の前に百合姉は正座した。
月の光が百合姉を照らし、冷たい風はその脇を吹き抜ける。
それを見た愛理姉は息を呑み、ほんのりと頬を染めていた。
「百合姉……」
愛理姉は小さな声でつぶやく。
百合姉は愛理姉を見上げ、切れ長の目で愛理姉を見据えた。
息を荒くしてたじたじになった愛理姉は、そっと百合姉の隣に正座する。
「愛理……我慢しなくても、良いのよ」
「百合姉……でも、将が見てる」
「おやすみ」
何だか俺は気まずくなり、自分の布団に入った。
そこから顔をのぞかせ、寝ている振りをしながら様子を見る。
百合姉は愛理姉の手にそっと触れた。
「ひゃっ……」
「息荒くしちゃダメ。可愛く見えちゃうじゃない」
身体中を硬直させる愛理姉に、百合姉はそっと触れていった。
愛理姉の手、腕、肩、そして腰。
そこに触れられていくたびに愛理姉は声を上げ、震える。
「百合姉ぇ……そこは、触っちゃダメ……」
「息荒くしちゃダメって言ったでしょ? 愛理」
「無理だよ……はぁっ」
「可愛いわね。お腹が空いたし、食べてあげるわ」
そして、百合姉は愛理姉をゆっくりと倒した。
半ば怯えている愛理姉の首元に、百合姉はかぷりと噛み付く。
「ふぁっ……!」
「……美味しい」
愛理姉は百合姉を見ながら、恍惚の表情を浮かべる。
そして百合姉は愛理姉の浴衣をずらし、肩を出した。
興奮と恥辱にまみれた愛理姉の顔は、月の光で一際妖しく映っている。
百合姉は口の端で笑うと、まだ不満足なのか、愛理姉の肩に噛み付いた。
「んぁ……百合姉、そこは……あぁっ……!」
メッセージとかレビューを書いてくれれば続き書くぞ。
何もないなら需要がないとみなす。