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禁則破りの臨界温度 14

俺たちは旅館に戻った。

「あ、赤ちゃんならきちんと預かってるから心配しなくて良いよ」

「ありがとうございます」

女将から無事を伝えられ、後ろから未優さんの安堵の声が聞こえた。

部屋に戻ると、未優さんの弟はすやすやと寝込んでいる。

〈良かった……〉

未優さんはそっと駆け寄り、近くに座って顔を覗き込む。

それを見ていた百合姉は、俺の右腕を取ってそれに抱きついた。

「ちょ、百合姉」

「将も昔はこんな感じだったのかしら?」

「分からんわい」

未優さんはとても幸せそうな顔をしていた。

まるで、今百合姉が俺をいじっているかのように。

(同じ姉ですから)

未優さんが言った言葉が俺の中で再生された。俺は百合姉を引き寄せる。

「将君、夏祭りが近くでやってるらしいよ」

愛理姉は俺に言った。

……行こう、という事らしい。愛理姉の目が輝いている。

美香姉も何だか行きたそうだった。

「じゃあ、その祭りに行くわよ。浴衣の準備でもしなさい?」

「はーい!」

「フフッ」

元気に返事をして、愛理姉は部屋の奥に行った。

俺は愛理姉に背を向け、自分の今持っている荷物を確認する。

理子姉は俺の隣にかがみ、静かに笑った。

「将君、楽しそうだよ」

「そうか?」

「鏡で見てみる?」

理子姉はポケットから手鏡を取り出し、俺に見せた。

「……」

俺の顔は、何だかいつもよりも楽しそうだ。

理子姉にそうだな、と言おうとした瞬間、俺の顔は凍りついてしまう。

「っ……!」

急いで顔をそらし、俺は天井のシミを数え始めた。

「どうしたの? 将君」

「か、鏡に……」

その言葉で理子姉ははっとした。

後ろで愛理姉が着替えている姿が、鏡にきちんと映ったのだ。

一糸まとわぬ後姿で。

「……」

「……」

夏祭りは大変な事になりそうな気がする。




夏祭りは夜、海の近くで行われた。

道沿いには屋台が次々と並び、観光客などで賑わっている。

辺りにはビルなどの高い建物が全く無いため、夜空も綺麗に見えた。

「じゃあ、しばらく自由行動にするわよ」

「はーい」

「わかった!」

「……うん」

「ああ」

そしてどこに行ったかというと。

俺は百合姉に連れられ、食べ物関係の屋台が集まっている所にいた。

フランクフルト、フライドポテト、たこ焼き、お好み焼きなど。

「将は何を食べるのかしら?」

「フライドポテトで頼む」



数分後、百合姉が持ってきてくれたフライドポテトを俺は受け取った。

百合姉はフランクフルトを頼んだらしい。

「そういえば、将っていつもフライドポテトよね」

「好きだからな」

「へぇ」

百合姉はフランクフルトを食べる……ではなく、なめている。何故か。

とりあえずその理由を聞いた。

「何でフランクフルトを食べないんだ?」

「なめた方が落ち着くのよね」

「何故」

「性格なのかしら」

……あまり深入りする所ではないのだろう。

フランクフルトをぺろぺろする百合姉と一緒に、俺はぶらりと歩いた。



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